スカポンタンバイク

リトル・マーメイドのスカポンタンバイクのレビュー・感想・評価

リトル・マーメイド(2023年製作の映画)
3.3
「片腕マシンガール」「異端の純愛」の2本立ての前座として鑑賞。

とにかくですね。トリトン王とアースラが出てるシーンは全部良いですね。
トリトン王は、すっかりダメ親父役が職人の域に達しているハビエル・バルデムという事で、親バカ感と傲慢なダメ親感が絶妙な愛らしさを含ませながら演じられており、凄く良かった。あと、公開前から言われてたアリエルの姉妹がみんな人種違うという話も、「まぁ『マザー』のハビエル・バルデムならそうだよなぁ」と謎に納得させられてしまった。彼ならあり得る。素晴らしいキャスティング。
アースラは、またメリッサ・マッカーシーがそれはそれは楽しそうにやっていて良かった。とにかく海という上下前後左右が自由な浮遊空間を活かしたアクションをちゃんとやってる唯一のキャラクターなので、アースラが出てるシーンはどれも楽しい。

というわけで、この2人を観るだけでも行って損はないですよ、と言って終わりたい所なのですが、2ヶ所心底イラッとさせられたのでそこには触れておきたい。
1つ目は冒頭も冒頭。ハンス・クリスチャン・アンデルセンの引用を入れた事だ。一体どういうつもりだったのか?私はその引用が入った時、物凄く期待をしたのだ。何故なら、本来アンデルセンの「人魚姫」は王子と結ばれない悲嘆の話であり、ディズニーの「リトルマーメイド」は悪く言えばインチキでハッピーエンドにした作品だからだ。つまり、本作はその原点に立ち返るという示唆だと思ったのだ。しかし、結局はディズニー版のリメイクでしかなく、アンデルセンの悲嘆などどこにもなかった。これは本当にイラッとしましたね。
2つ目は、アリエルが声を失ってから、心の中での歌唱シーンがある事。これも本当に「何を考えてるんだ?」と思ってしまった。心の中とは言え、こんなに雄弁に歌われてしまったら、声を失ったアリエルの頑張りが全然伝わってこない。声を失うという事が「人魚姫」において、どれだけ大変な事なのかを分かっていれば、こんな目先のミュージカル的な楽しさに飛びついたりなんてしないはずだ。しかも3回くらい歌うシーンがあって、その度に本当にガッカリさせられた。別にキャラクターの気持ちを表現するのは歌だけではないんだぞと言いたい。

しかし、まぁ話は「リトルマーメイド」なんで、リトルマーメイドが普通に好きって人は楽しめるとは思います。フランダーがホントただの魚にしか見えないとかはありますが、それはまぁ結構慣れるんで。まぁ、慣れたからってよく見えるかは別問題なわけですがね。セバスチャンは目の演技が意外と良いです。