好きな人がいること、なりたい姿があること、生きたい世界があること、そのすべての願いが、溢れだすエネルギーの奔流となって、歌声に乗せられてわたしの心臓を貫いていくような感覚。
こんなふうに、わたしに与えられたすべてのエネルギーを使い切るようにして生きたいなあと思った。さしずめミュージカルのような人生。気持ちが良かった。ミュージカル映画ってそこまでときめいたことなかったけど、アリエルが海を伝わってこの地球ぜんぶに聞こえちゃうじゃないかってくらいおおきな美しい声で歌うから、ほんとうに、彼女の願いが叶いますようにって子供みたいに純粋に祈っていた。
わたしはカネコアヤノというアーティストが大好きなのですが、いま感想を書きながら、なんとなく彼女のことを思い出している。リトルマーメイドは物語だけど、いま現実に生きているカネコアヤノのおおきな歌声のことを思い出すと、すべての幸せを祈る気持ち、少なくとも、この音楽を聞いて同じように感じるすべての人に幸せになってほしいと思う気持ちを、わたしのなかのほんとうに綺麗な場所を取り戻せるような気がするから。
アリエルとエリックを讃える家族とキラキラの海があまりに眩しくて、長い長いエンドロールの間、わたしは目を閉じて、ひたすら物語から出られないままでいた。