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冷たい熱帯魚のeyeのネタバレレビュー・内容・結末

冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

"冷たい熱帯魚"(2010)

埼玉県はとても暑い街 

熊谷市にて

90年代初頭にあった
実際の殺人事件から
インスパイアされた映画

この事件を
詳しく手軽に知りたければ
Wikipediaでもバッチリだが…

角川文庫から出版された

『愛犬家連続殺人事件』(2000)

を読むと、より詳しく知れる

ゴーストライターも加わり脚色を加えてるので変な記述も見受けられるが

内容は全て事実

リアリティ且つノンフィクションであり「こんな殺人の内容をあからさまに本に出来るのか」と驚愕できる内容になっている

内容が過激過ぎるため
世に出すべきではないということで絶版にしたのも理解できる

凄まじい殺人の数々の裏側に
了解不明な殺人哲学を持ち合わせる

>殺しのオリンピックがあれば
>俺は金メダル間違いなし

>殺しにかけては俺がナンバーワン

>人間の寿命は俺が決める

とまで言い切っていて
異常性や完全犯罪を目論む
卑劣な関根死刑囚役を

でんでん氏が怪演している

狂気の殺人哲学は5つ

1.世の中のためにならない奴を殺す
2.すぐに足がつくため、
保険金目的では殺さない
3.欲張りな奴を殺す
4.血は流さないことが重要
5.死体(ボディ)を透明にすることが一番大事

1.はデスノートの夜神月(キラ)みたいな思想だけど…

重要なのは5.

>死体(ボディ)を透明にすることが一番大事

という思想

映画の中でも

死体を風呂場に運び入れ
肉・骨・内臓と
細かく切り分けた挙げ句
骨は一本ずつ丁寧に焼く
そして崖から骨灰をまいて終了

細かく刻む必要性
いっぺんに焼かないのは
殺人を重ねて得た知恵でもある

それをそのまま映画化する
園子温監督もだいぶトんでいる

この物語は

小さな熱帯魚店を営んで
妻と娘に愛想をつかされ
うだつのあがらない社本の内に
秘めた狂気を探る映画でもある

"狂気が暴力になり
暴力こそ全てになる"

村田と社本は表裏一体で

実際に劇中で村田は社本をみて
幼い頃の自分に似ていると話している

その姿に昔の面影を重ね続けている

実は村田自身はとても気が小さい

虚言や虚勢の裏側には
他の人間に真似できない
大胆且つ不敵な行動がある

対する社本も当初は
村田の狂気を直視できない

が、、、

実は狂気がウィルスのように
身体の中に入り込んでいる

有無を言わせない恐怖そして暴力
で支配していることを学んだ社本

そして最終的に村田を殺し
パーソナリティ上、同一化する

"人生の痛みは痛覚を通して学べる"

という思想を示し
社本自身の死も痛みに含まれる

村田自身は死の間際
父から受けた虐待を回顧する

父の不在は
村田の精神をバラバラにし

それは他者に対する統合できない
バラバラなイメージが投影される

ヤクザの殺人すらも
厭わなかった村田aka関根死刑囚は
すでに獄中にて病死

この物語はフィクションと称した
ノンフィクション

実際に亡くなられた方がいて
成り立っている映画でもある

改めて冥福を祈ると共に
個人的に軽い気持ちで観られない

そして
ホラー・スプラッター・殺人鬼に
免疫のないヒトは注意
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