さすらいの旅人

青春残酷物語のさすらいの旅人のレビュー・感想・評価

青春残酷物語(1960年製作の映画)
3.9
1960年の映画とは思えない斬新さは正に異端児の作品だ。
【CATV/日本映画専門ch/録画視聴/4K修復版シネスコサイズ】

当時の大人たちが観たら卒倒しそうな映画だ。
自由奔放な大学生と純情な女子高生の壮絶なラブストーリー。
背景は反体制派の大島監督らしく、学生運動の挫折と新たに出現した若者たちの反道徳行為だ。暴力、SEX、堕胎、不倫、美人局などが映画の中で赤裸々に語られる。正直、現代の感覚からは、かなりズレがあり共感出来るものではない。

本作で驚くべきことは製作配給が老舗映画会社の松竹作品と言う事だ。大船調と言われたた人情喜劇の作風の映画会社が、真逆の反体制映画を作ったからだ。当然、大島監督はその後松竹を離れ独立プロダクションでの製作に切り替えて行く。

斬新な映像は今見ても古くない。木場の材木の上での長回しによるラブシーン、荒海を背景にした砂浜で横たわるサングラスの川津祐介と桑野みゆきの絡みはまるでフランス映画だ。松竹ヌーベル・バーグと言われる由縁だ。ラストの堕落して行く男女の行く末も悲劇的だ。

とにかく1960年公開の映画とは思えない独特の個性ある斬新映像や演出は、さすが大島渚監督の映画だ。