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マンガをはみだした男 赤塚不二夫のcyphのレビュー・感想・評価

3.7
映像作品としてもひとりの人物の多角的ポートレートとしてもかなりよく出来たドキュメンタリー作品 満州で幼少期を過ごしたこと、引き揚げてくる道中で幼い妹は亡くなったこと、奈良の田舎で不良になったこと、映画館の看板職人を手伝いタダでたくさん映画を観たこと(トキワ荘の若者たちはそれぞれ異なるバックグラウンドの中でたくさんの映画を観てきていて、その前夜譚の一つのレパートリーとしてぐっとくる)、就職後も漫画投稿を続けていたこと、トキワ荘のハイライトの一つであるナマちゃん誕生秘話、芸能活動という栄華、アルコールに溺れ破滅的な生活になっていく晩年、その人生を支えたふたりの妻、そして娘の視点

言葉の通じない人間に囲まれた満州で育ったから愛嬌やかわいげを振り撒くことで生き抜く術を身につけた、という自己分析が彼の人生全体を的確に貫く記述になってるのも面白い 中年に差し掛かってもなおニコニコとかわいげを振り撒いてすべてを惜しみなく与えながら生きてる知り合いを思い出した 考えてみたら笑い方や顔のつくりもそっくりだ
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