梅田

息の跡の梅田のレビュー・感想・評価

息の跡(2015年製作の映画)
4.1
実際のところこういうタイプのおっさんって意外と居るもんだと思うが、ここまで突き抜けるのはそういない。3.11震災を契機に、そういうおっさんの一人が覚醒した姿を観た。思考に言葉が全く追いついていないからこそ、言葉と行動が等価となっていく。また、映像という言語と相似形をなしている。

上映後の舞台挨拶に立ち会うことができたのは幸運だった。エンドロールのシーンは、山形国際ドキュメンタリー映画祭に出展したあと、劇場公開が決まってから撮影し追加したらしい。小森監督は「記録として撮影はするつもりでいたが、映画にあのシーンを追加することで『物語』を作ってしまうことは嫌だったので、当初は使うつもりはなかった」と話していたが、結果その心配は杞憂に終わっていると思う。「終わっちゃった!」という台詞があんなに未来を感じさせるなんて。
監督はもともとドキュメンタリーよりフィクションの製作を学んでいたそうだが、現在は震災の記録に関わる一般社団法人を設立し活動しているとのこと。「いずれフィクションも撮ってみたいとは思っている」との話を聞くことができたので、同年代の映像作家が震災以降の感性で作るフィクション映画も、楽しみに待ちたいと思う。
梅田

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