自分たちが異星人であることに気付いてしまった家族の物語。
僕が思う吉田大八監督の持ち味は。
哀しみの上に喜劇をデコレートする演出。
胸が締め付けられるように痛いけれど、それを吹き飛ばすように笑えてしまう…言うならば塩辛くて甘い物語。みたらし団子のような世界観。地に足がついた夢物語。
あ。ちなみに僕は。
みたらし団子は嫌いですが、吉田大八監督の作品は大好きです。一番好きな作品は『クヒオ大佐』で、次が『パーマネント野ばら』です。やはり、下地である哀しみ（両作品とも“孤独”がキーワードでした）がしっかりしていれば、それだけで物語は映えるのです。
さて、本作を考えてみると。
この下地が中途半端なのです。
だから、表層に甘いクリームを塗っても、それが活きたように感じませんでした。これは、脚本の時点で家族の正体を疑わせる描写を“複数”入れてしまったことに起因していると思います。
もしも、この描写をもう少し控えていれば。
本作の印象は大きく変わっていたでしょう。
正体を考える過程で埋没してしまった“家族の問題点”が浮かび上がり、痛いほどに“哀しみ”が伝わってきたと思うのです。
だから、役者さんたちの持ち味も。
同じように活かしきれていませんでした。
特にリリー・フランキーさん。今や、邦画界では欠かせない存在ですが、全くもって魅力的じゃあないのです。それは、彼の家族である中嶋朋子さんも亀梨和也さんも橋本愛さんも同じ。誰が演じても構わない…と思わせたらダメだと思います。
まあ、そんなわけで。
監督の作品が好きで公開初日から劇場鑑賞に臨んだ身であるがゆえに、苦言ばかりの感想となってしまったことを、とても心苦しく思います。監督の次作『羊の木』は…是非ともヒリヒリとした哀しみを描ききっていただきたいと願う次第です。
そして、最後に。
予告編の酷さには肩が下がる思いですな。
クライマックスギリギリの部分まで使用していますからね。確かに予告編は“期待値を上げること”が重要ですが、それでも限度はあるかと思います。ネタバレに目くじらを立てるような作品ではありませんが…観客を間違った方向に誘導する手法は如何なものかと。
あー。最後まで苦言ばかりでゴメンナサイ。
