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ファウンドのこどものレビュー・感想・評価

ファウンド(2012年製作の映画)
4.7
Your brother is really “SICK”

半端ないヒーリング効果を実感。光溢れる明るく繊細な画造りに重なっていくマーティの独白。彼が感じる圧倒的な「孤独感」を伝えるのに、独白と云う手段は非常に効果的に作用する。終始、孤独なマーティと、孤独な鑑賞者である私だけが心の琴線で繋がっているような感覚を味わう。

そんな彼をとても近い距離で見つめているからこそ、彼がクソな世界に反抗できた暁には胸を熱くできるし、彼の成長がもたらしてくれる青春の風には鼻腔をくすぐられる。
そして、スティーブの悲しい行動原理にも理解ができてしまう。この冷たい世界を生きる為には、自分の脳みそを狂信するしかないのである。

ラストカットは謳い文句通り。これ以上はないラストカットだった。
己の行動に矛盾を感じながらも、「寂しくないように」その一心であぁしたんだろう。
本当に優しくて悲しくて弱い殺人鬼。

マーティはもともとグロい映画やグラフィックノベルを好んでいたことや、本作がホラー映画やスプラッタの体裁を取りながら、実際にここまでのヒーリング効果を与えてくれることを加味すると、敢えて言うなら本作は「ホラー映画批判の『批判』」といったところだろうか。

確かに「こんな体験は、人間を歪ませる」かもしれないけれど、決して首をぶった斬りたくなる精神の方向には曲がらないはずだ。
今の私はとても落ち着いている。
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