Inagaquilala

T2 トレインスポッティングのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)
3.5
残念ながら、あまりにこの作品に対して期待が大きかったせいか、この単なる後日譚には落胆した。4人の仲間でドラッグを捌いて手に入れた1万6000ポンドの金を、ひとりで持ち逃げしたマーク・レントンが、20年後にオランダからスコットランドのエディンバラに戻ってくるという物語なのだが、現在のレントンが置かれている状況が曖昧なため、単なる蛇足に終始してしまった。

劇中では、最初、再会したかつての仲間サイモン(もうシック・ボーイとは呼ばれない)へと語るところによれば、レントンは持ち逃げした金を持ってロンドンからアムステルダムに行き、そこにいままで住んでいたことになっている。彼の地で結婚して、一男一女の父だと語る。だが、これは嘘で、物語が進むにつれて、若干修正されるが、描かれるレントンの現況はひどく曖昧で、これがこの後日譚から「魂」を奪い取っている。

やはり、マーク・レントンの20年分のバックストーリーは必要だったように思える。なぜそこがあっさりとしているのか、疑問は残る。勢い、レントンに対しては懐旧の情しか抱くことができず、彼の現在の物語に入っていけない。美人局をしているサイモンの描写も似たようなものだ。強いて挙げれば常用するドラッグがヘロインからコカインに変わっていたくらい。

今回、徹底した悪役としてフューチャーされているベグビーも同様。持ち逃げしたレントンを狙う脱獄囚としか認識できない。もう少し、昔の仲間感があれば、また違った、少し心を震わせる物語になったような気もする。

わずかに、あいかわらずドラッグ中毒者であるスパッドには、少しシンパシーを寄せられた。彼が小説を書くというのは、今回だけのオリジナルなキャラクターづけだと思うが、この彼が小説を書くというアイディアは、この後日譚の中で、唯一気に入ったものだ。

映像については、もちろん前作「トレインスポッティング」のものも登場するが、比べるとかなりキレは落ちているような気がした。それは熟達とも言い換えてもいいかもしれないが、前作で見られた思わず目を見開くハッとするような映像は少なく、ひたすら安定したカットが続く。

前作から20年、登場人物たちもおそらく40代となっており、全体的にややくたびれた感じだ。レントンも肉付きが良くなったし、触れば切れるナイフのようだったサイモンもただのオヤジだ。なかでもベグビーの変貌ぶりは気になった。それらに比べ、スパッドの変わらぬ感じが、やはり救いだ。

同じように20年ぶりに故郷の町に戻り仲間と再会する設定の作品「ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う!」のぶっ飛び具合に比べると、かなりこちらはあたりまえな作品になっている。前作が素晴らしい作品だっただけに、勝手に期待していたが、これならあえてつくらなくてもよかったかもしれない。
Inagaquilala

Inagaquilala