花俟良王

T2 トレインスポッティングの花俟良王のレビュー・感想・評価

T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)
4.0
未だにダニー・ボイルは上辺だけの映像派みたいことを言う人がいるが、ちょっと理解できない。まして本作を上辺だけと評する人がいるなら尚更だ。

20年。あれからもうそんな時間が経ったのかと僕らリアル世代は思う。前作の破天荒な彼らに共感し、ユアン・マクレガーのように笑っていた僕らは相当丸くなってしまった。無限に広がっていた未来は細い一本道になっている気がする。

キャストも監督も同じだけ歳をとった。映画が始まっても躍動感がないことに最初はもどかしさを感じた。でもそれは正直なことだ。20年とは、そういうことだ。自分や周りを見れば嫌でもわかる。

だからリアル世代が涙なしでは見られないのが、突如始まるユアン・マクレガーの「人生を選ぶ」ことについての独白。この人生を選ぶことによって失われたもの、人、チャンス…。気がつけばあの頃の親と同じ年齢になっている自分のことを言っている。

なんだか、後ろ向きな懐古主義映画みたいに書いてしまったが、そんなことはない。「未来を選べ!」というコピーは未だに有効だ。しかし20年を経た今はもう一つお題が与えられている。

「過去を受け入れろ!」ということ。

あの頃聴いていた人それぞれのイギー・ポップを今でも真正面から受け止めてみろ。話はそれからだ、と。

だから一番しっくりくるタイトルは「T2」ではなく「T2 ver.0」!ここから始まるんだよね。

唯一心残りなのは、アンダーワールドが何度も寸止めされにも関わらず、結局爆発させてくれなかったことだ。
花俟良王

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