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ローマ法王になる日までのwakachangのレビュー・感想・評価

ローマ法王になる日まで(2015年製作の映画)
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現法王フランシスコはアメリカ大陸から初めて選出された法王…位の知識で試写会で見たら、かなりハードな良作でした。

アルゼンチンがビデラ軍事政権下の独裁政治だった時代を中心に描いていて。宗教家であるひとりの青年が、ギリギリの時にどう行動したか、まるで追体験するようでした。

アルゼンチンが軍事政権下にあった時、あんなに宗教家や国民が弾圧されていたとは知らなかった。本当に容赦がなくて。日々の圧力はもちろん、簡単に抹殺されるし、行方不明の人も多数。そんな中、主人公は人々に手を差し伸べ続ける。ほんとハラハラして、サスペンスでした。同じ教会の中に政府側に付く人もいて。気の休まらない日々が続く。

南米繋がりで、ふと『戒厳令下 チリ潜入記』(1987年/ミゲル・リティン監督)を思い出した。ああ、そっち行っちゃダメ。ああ、そんなこと言ったらヤバい。とハラハラしっぱなしでした。政府に目を付けられた人を助けたりするし。あんなこと、そうそう出来る人はいない。

現法王の若き日を演じるのは、『モーターサイクル・ダイアリーズ』でゲバラの相棒役だったロドリゴ・デ・ラ・セルナ。苦悩と意志の強さが似合ってた。脇もうまい人ばかり。監督はイタリアのダニエーレ・ルケッティ。アルトゥーロ・カルデラスの音楽も印象的に使われてた。

またフード映画でもありました。神学校の食事や、困ってる人に振舞われる料理は質素なもの。でもイエスズ会の偉い人を訪ねると、瀟洒なティーセットでお茶してる。おいしそうなお菓子のタワーがあり、マカロン*を「ピスタチオがうまいんだ」とか言って勧める。その落差よ。

宗教家が主人公。だけどカトリック賛美な作品ではなくて。例えば軍事政権下では同じ聖職者でも、人それぞれだったというのを描いてた。だから普遍性があって。もし自分がそんな国で暮らしていたらどうするだろうか…と考えさせられた。いまの日本は近いものがあるなあとも。

なお『ローマ法王になる日まで』の主人公の現法王のフランシスコは、「ロックスター法王」と呼ばれていて。ホームレスを朝食に招待したり。若者と自撮りしたり。いまでも狭い部屋に住んでいて庶民派で。貧しい人たちに寄り添い、環境問題や人種差別にも言及し、トランプ大統領に苦言を呈する。ローリングストーンの表紙にも。

現法王フランシスコの提案や行動は、別に信者じゃない私も賛同できることが多くて。他宗教や他宗派と交流したり。アメリカとキューバの関係改善に尽力したり。聖職者の児童虐待に断固たる態度を取ったり。ま、詳しくはwiki参照。中絶に反対してるけど、中絶した女性は赦すとしている。かなり柔軟だ。そういうのは、彼が映画で描かれているような苦しい時代を過ごしたからなんだろうなあ。
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