賽の河原

愚行録の賽の河原のレビュー・感想・評価

愚行録(2017年製作の映画)
3.1
満島ひかりの演技最高だねーとか妻夫木聡がいいねとか色々言及されてますが、何と言ってもいわゆるリア充の周りとしての「キョロ充」をやっている松本さん?(役名ハッキリしてなくてすみません)のいい意味で少しブサイクな感じの女の子のキャラクターが素晴らしいですね。
「桐島、部活辞めるってよ」の「おまたー」でお馴染みの彼じゃないですけど、そういうヤツがスクリーンにちゃんといるって最高ですね。あの「届かないけど頑張ってる」感じ、友達が誘われると羨ましそうな感じ、それでいてちゃんと優しいっていうw
サスペンスでありながら群像劇でもあるんだけど、ちゃんと「持たざるもの」がいる感じというか。前日に「ラ・ラ・ランド」の「持ってる人たち」のお話見てただけにそこは凄く良かったです。
映画はちょっと長かったかな。このお話でその尺はどうなんだろう。というのはあった。例えば、殺人現場の家を妻夫木くんが訪れるシーンとか。最初に同じような形した家が並んでるの見せて、庭の荒れた感じも見せて、物が軽く朽ち始めてるの見せて、って描写のテンポが冗長。
あのニュータウン的な同質で無機質な家のカットだけで充分に不吉さとか暗さは演出出来てると思うんだけど。全体としてそういう語りのテンポがスローで長くなってるかなあと。
あとは皆さんあげるだろうけどバイオレンス描写ですかね。性と暴力の描き方は正直物足りないですね。似たような感じの映画でも「冷たい熱帯魚」とか「凶悪」とかの方が見所はあった。特に妻夫木聡があることを行うシーンの暴力描写は「ん?これはフリかな?」「実はそうじゃない的な」ってノイズになるくらいにはダメダメでしたね。
とはいえ監督は初監督作品で劇の構造、テーマといい、つまらなくはなかったです。人間という生き物に本質的にセットされた利己性を愚昧、愚行として描くという。序盤と終盤の連環した構造もシンプルにうまいんじゃないですか。あとはバスの乗客の表情とかね。最初と最後とは見え方が変わるっていう。つまりは観る前と観たあとでは観客も変容しているって実に映画的だと思います。
次回作も全然楽しみですし。ヒットしてる監督でもお話にならない映画作ってる監督なんて幾らでもいるじゃないですか。
幾分退屈な部分はあったけど、また原作を読んだら印象も違うのかな。読んだら追記したいで
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