九月

ドラゴン・タトゥーの女の九月のレビュー・感想・評価

ドラゴン・タトゥーの女(2011年製作の映画)
4.6
初めは何の関わりがあるのか分からなかった別の出来事や、接点のないミカエルとリズベットのことがそれぞれの軸で描かれ、どう繋がっていくのか全く見当もつかなかった。
目を背けたくなるようなシーンや、何故こんなことを…?という行動を目の当たりにして困惑しながらも、全てのことに何か意味があるのだろうと確信させる、信頼感のある物語の運びと映像。
終始不穏な空気が漂い、嫌な場面が多すぎるにも関わらず、とても引き込まれた。

ルーニー・マーラ演じるドラゴンタトゥーの女、リズベットがとにかくかっこいい。
彼女の行動原理には度々首を傾げつつも、最後まで見て、彼女自身も含め、今まで虐げられてきた女性たちの代弁なのかとも思える。
自ら精神障害があると言いながらも、それさえも嘘なのかと思うほどの立ち回り。本当の気持ちはどこにあるのか読めない怖さがあったけれど、ミカエルと関わることによってだんだん変化していく様子が見て取れた。その機微の表現に唸った。
リズベットがミカエルに最後に一瞬だけ見せる笑顔、あの表情がたまらなく好き。

どの局面においても、全てはリズベットのおかげで、常に主導権を握っているのは彼女のように思えた。好きになった(なってしまった)相手のために危険を冒し、鮮やかに影で糸を引く姿は本当に見事で、男性の優位性を覆すような痛快さがあった。
と、思いきや…結局、現実を思い知らされるようなラスト。彼女の恋心を思うとほろ苦く切ないが、現実社会を照射するような皮肉めいた終わらせ方が案外とても好き。
それに彼女のことだから、こちらが悲しみに暮れる必要はないと思わせる力強さもある。

スカッとする部分も多かったけれど、そもそも性的な搾取や犯罪の被害に苦しむ人がいなくなることを願わずにはいられない。10年も前の作品だけど、今はどうか、変わっているのか、なんて考えるとちょっと気が重くなる。


友達と約束した『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』を観るにあたって、ダニエル・クレイグ版007を一気見しようとしたのだけれど、びっくりするぐらい主人公に嫌悪感を抱いてしまい結局全て観られず…最終回だけ観ても全然感情移入できず…ということがあり、ダニエル・クレイグに勝手に苦手意識を抱いていたのだけれど、この作品のおかげであの時の気持ちが昇華した気がする。
九月

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