開始早々、あの大女優イザベル・ユペール様がレイプされるという衝撃の幕開け。
御年64歳(!)ながらも、ものの見事に体当たり演技をこなした彼女の美魔女っぷりよ!
彼女のスタンドプレーこそが本作を価値あるものにしていると云っても過言ではありません。
これぞフレンチ女優の鏡です。
ただ、さすがに49歳の設定はちょいとギリな感じもしましたが。
野暮なこと言うとその年齢だとニコール・キッドマンとかジュリア・ロバーツとかソフィー・マルソーとか原田知世とかと大体タメだもんね。
しかし、アラ還の国民的大女優に対してここまで鬼畜な仕打ちをするなんて!
もう犯人というか、黒幕はやはり永遠の宿敵イザベル・アジャ……、という私の推理はもちろん大きく外れました。
その犯人を自力で探し出し、結果だいたい周囲の人間(主人公含む)は変態かバカか変なヤツしか出てこないエロス・サスペンス劇。
あの『氷の微笑』の監督ヴァーホーヴェンの作品ということで、まさしくそのキャリアの延長線上にあるべき納得の内容だったし、
このユペール起用にはハネケ監督『ピアニスト』がなければ実現しなかったのでは?
疑わしき男たちの醜悪さ、そして性被害の根底にカウンターを喰らわす女性のタフさと恐さが際立ちます。
発展し続ける現代社会で女性の社会地位も向上しつつある実状とは裏腹に、男女のセクシャル・バランス(性的主従)は停滞、もしくは後退しているという暗部を逆説的に揶揄。
アブノーマルな趣向とショッキングな内容が先行する割に、
シナリオがあっちこっち移行してメリハリを削ぐ粗さや、主人公の衝撃の過去に対する焦点が思いの外ぼんやりしてたり、そこはやはり原作に準えた映画化ならではの定めなのかなと。
後味はどことなく『ゴーン・ガール』を想起。
Iggy Pop「Lust for Life」推しは本作のテーマを補填する一つなのか、それとも翌年(2017)公開の「T2」への何らかのエールだったのかは謎であります。