みかんぼうや

しゃぼん玉のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

しゃぼん玉(2016年製作の映画)
3.3
【宮崎の美しい自然に包まれながら市原悦子さんのただただ温かい演技に触れる遺作】

以前から気になっていた作品で、レビュアーの皆さんも軒並み高評価をつけていた本作。休みの日の気持ちのいい天気の中で観たいな、と思っていてGW中にようやく視聴(レビューちょっと遅め)。

忖度無しに書きますと、とてもよい話ですが、思った以上に“綺麗で分かりやすい”展開と若干大げさに見える演出がやや気になってしまい、作品自体にガッツリ没入することはできませんでした。なんとなく、もっと“犯罪者である自分に対する葛藤に苦しみ続ける”系の作品だと勝手に思っていたので、これだけ純粋な映画に対して、自分の気持ちがその純粋さに向き合えていなかったような、自分自身に対してややモヤモヤした思いがありました。

一方で、多くのレビュアーさんが書かれている“宮崎の自然の美しさ”や“市原悦子さんと林遣都さんの演技”にはかなり魅了されました。

作品の舞台となる宮崎の大自然については、もう言葉でその素晴らしさを語ることは不可能、というくらい美しい。森の緑が、霞みがかった山々が、そしてそこに暮らす人々の家や生活風景さえも。同じ国なのに、東京の都会の夜景の美しさとは180度違う位置に属するのではないかと思わせる宮崎の自然と青空の美しさ。この地を舞台に行われる平家祭りの雰囲気や、屋外に響く宮崎民謡も本当に素敵。

そして、本作が遺作となった市原悦子さんから溢れ出る無償の愛と温かさ。この作品の1~2年後にお亡くなりになったことを考えると、ラスト近いシーンでの「もうそげん長うこと待てんよ、ばっちゃんだからねぇ」という言葉がかなり胸に染みて、映画本編の流れとは別にとても切ない気持ちになりました。そういう意味でも、本作は“日本のおばあちゃん”、市原さんの最後となる温かい演技に触れることができてとても良かったです。

林遣都さんについては、実は本作までほとんど演技も出演作も観たことがなかったので、登場時からのやさぐれ感と、ラストの精悍な雰囲気の差にビックリ!演技外の普段の印象もほぼ知らなかったので、登場時の雰囲気がむしろ普段に近いのかな、と思うくらい演技がハマっていました。

冒頭に書いたとおり、物語や演出そのものにはあまりハマらなかったですし話自体も実は暗い要素が多いのですが、全体としては宮崎の大自然と市原さんの温かい空気感に包まれ、その印象が強く残った2時間弱でした。
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