せんきち

マンチェスター・バイ・ザ・シーのせんきちのレビュー・感想・評価

4.5
凄い。今年観た中で一番凄い。ヘビー過ぎて簡単に観返せない傑作。


アメリカ、ボストン郊外で便利屋として働くリー(ケイシー・アフレック)に兄の急死の報が来る。故郷マンチェスター・バイ・ザ・シー(ニューハンプシャー州のマンチェスターとは別の地名)に戻る。兄の遺言で甥のパトリックの後見人となる。パトリックは高校の友人もいるし恋人(二股かけてる)もいる。地元は離れたくないと言うがリーは自分も地元であるマンチェスター・バイ・ザ・シーに住むことを拒絶する。それには理由があった...



リーと甥のパトリックの物語を軸にリーの過去がパズルの様に埋め合わされていく。粗暴で他人と関わろうとしないリーの性格がいかにしてこうなったのかが分かるのが中盤。なるほど、そら人格も変わるわと。


リーを演じるケイシー・アフレックの凄まじく重い何かを抱えたまま、語る言葉を持たない(表現できない!)男の演技が素晴らしい。取り返しのつかない重大な過ちをずーーーーっと自責してるのだ。誰かに裁いて欲しいのに誰も裁いてくれない不幸。


甥のパトリックとの生活の中でリーは少しずつ心を少しずつ開いていき、クライマックスで自分の思いを吐き出す。たった一言のとんでもない重さ!


自分の過ちと向き合い少しだけ救われる映画として本作は橋口亮輔『恋人たち』西川美和『永い言い訳』に似ている。特に『恋人たち』の篠原篤の演技とケイシー・アフレックの演技のシンクロ具合。多分、鬱病の人をリサーチして演技したと思うけども。しかし、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』で提示される希望の少なさ!リーは絶望はミリ単位でしか改善してないという。ただ、それでも生きていく価値はあるのではないかと思わされるラストは見事。


終盤はどのシーンもいいけど、公式HPのカット。できれば予告観ないで観て欲しい。もうこのシーン思い出しただけで、胸がえぐられるようだ。リーの元嫁のミシェル・ウィリアムス慟哭の凄まじさ。もうすぐ公開終わるけど、観れる人は是非観て欲しい。DVD化したら吹替どうするんだろ。この演技に吹替つけるの超大変だと思う。



http://www.manchesterbythesea.jp/
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