ゆず

マンチェスター・バイ・ザ・シーのゆずのレビュー・感想・評価

3.7
人間嫌いの男が、死んだ兄の遺した甥っ子の面倒を見るために故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ってくる話。
主人公リー・チャンドラー役にケイシー・アフレック。リーにとって兄ジョーは尊敬する偉大な兄で、ベン・アフレックという立派な兄を持つケイシー自身とも重なるか。ちなみにジョー・チャンドラー役を何の因果かカイル・チャンドラーが演じている。遊び心と受け取っていいのかな?

作品はとても重いヒューマンドラマなんだが、どうしてか私は「これ笑っていいのかな?」と思いながら観てたりもした。
父親ジョーを喪って叔父リー以外に頼れる者がいなくなった悲劇の少年パトリック、…なのだが、意外にも飄々としていて、気丈なのか若者特有の無感情なのか、一見まるで父の死を悲しんでいないように見える。
パトリックは、スクールカーストでは上の方でリア充生活を送っており、運動部にバンド活動、恋愛にも忙しい。その生活スタイルが、父親が亡くなっても変わらない。変えようとしない。
それに付き合わされるのが叔父のリーである。リー自身も兄を喪った辛さを抱えているのだが、パトリックを思うあまりに彼の運転手に成り下がっている。
この叔父の情けなさに、なんだか少し笑みが零れてしまうのはおかしいだろうか。

そしてこの海辺の町マンチェスター・バイ・ザ・シーには、リーにとって忘れたくても忘れられない辛すぎる思い出が今も横たわっている。
リーはこの町にいるだけで身を切られる思いがするし、パトリックも実はしっかりと精神ダメージを蓄積している。
ある意味不器用すぎる叔父と甥。
それでも決めねばならないことは決めねばならない。
かなり辛くて重くて、でも情けなさはどこか笑いを誘う。少なくとも私にとっては。

6/7 マンチェスター・バイ・ザ・シー 字幕 @フォーラム仙台
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