たいてぃー

ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命のたいてぃーのレビュー・感想・評価

3.5
最近、ホロコーストを取り上げた作品、多い。その中でも「サウルの息子」が未だに印象強い。本作は、ユダヤ人を救った話。日本人であれば、杉原千畝が有名だが、樋口季一郎や安江仙弘らも浮かぶ。ポーランド人では、イレーナ・センドラーやヤヌシュ・コルチャック。名匠、アンジェイ・ワイダ監督の「コルチャック先生」も忘れがたい作品。本作でも、コルチャックは登場する。
冒頭のジェシカ・チャステイン演じるアントニーナが自転車で動物たちとふれ合う、瀕死状態の子象を必死で助け命を救う。これらは、その後のナチス侵攻での悲劇的状況と対比させている。でも、ちょっとあざといか。ナチス占領後は、動物たちの射殺シーンが数多く出てくる。何の罪もない、動物たちが崩れ落ちる姿は、本当に切ない。
ダニエル・ブリュール演じるナチス動物学者のルッツ・ヘック。ナチス侵攻前は友好的だが、立場が変われば、私欲を押し付ける。絶滅したオーロックスの再生をアントニーナへ持ちかけ、彼女へ言い寄る。権力を笠に着たズルさがこの上ない。それでも、ラスト近くでのアントニーナの息子への対応は、人間味がある。戦争は、人間性まで変えてしまうって、つくづく思いやられる。このダニエル・ブリュール、ホント上手いよね。
でも、この二人とアントニーナの夫の関係って、どうなんだろうね。本作の主題から外れた、メロドラマ風で。分からんじゃないけど、不満は残る。