嶽花征樹

ウインド・リバーの嶽花征樹のネタバレレビュー・内容・結末

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

年をとって、息子がそばにいる状態で見たからなのか、かなりズシンと心に重いものが残りました。まったく救いがないというわけではないのですが、何かやるせないものが残るのは確かです。

自分はスタンダードなものよりも、奇抜な作品を見たがる傾向が強いのですが、その理由を思い知らされました。この作品のようにリアルな内容だと、下手すると自分の周りにも起こり得るかもしれない、という臨場感から絵空事ととして安全な位置から見れないからなのだ、と。じ

ジェットコースターは安全だと分かっているから、人はみなスリルを楽しめるのであって、もしかしたら死ぬかもしれないと分かってたら、敢えて乗るような人は居るだろうか。本作はとても良くできた作品だと思いますが、見るには心と体がしっかり健康で、この内容に耐えうる状態にしておくべきかと思います。

一つ一つのセリフに人生の重みを感じさせるものがあり、ラスト間際の犯人に対する語りかけなどは静かな迫力があり、青空の下で逃げ惑う犯人のシーンはかなり印象に残りました。特に犯人の言い訳の酷さが、逆にとてもリアルに感じられ、不条理なやるせなさを感じさせるものがあったかと思います。こういう事を言うようなやつだから、あんな事をしたのか、と。

最後の死化粧のシーンで「誰も教えてくれるものが居ない」といいつつ、静かに語り合う子どもを無くした父親同士が佇むラスト。人生に答えはないというのを体現してるかと思います。どんな顔をして見ればいいのか、分からないまま物語の幕は閉じる。
嶽花征樹

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