ゆず

ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜のゆずのレビュー・感想・評価

3.8
神山健治監督についてはTVアニメ「攻殻機動隊SAC」のイメージが強く、この「ひるね姫」が発表された時にはメルヘンな作風を意外に思った。しかし、見終わってみると、やっぱり「攻殻SAC」や「RE:CYBORG 009」のように理詰めで物語を進めていくところが神山監督なのかなあと思う。

表向きはファンタジーとして始まるこの物語。しかし「大人のファンタジー」と謳っているところがミソである。機械の王国ハートランドも、エンシェン王女も、魔法のタブレットも、喋るぬいぐるみも、スチームパンクな巨人兵器も、私たちがファンタジー映画に期待したものは次々と登場し、さらには焦土に巨大ロボなんてカッコイイ絵面まで見せてくれるのに、そこにのめり込み過ぎては作品を楽しめなくなるというちょっと難しい距離感の作品。むしろファンタジー作品をフィクションとして楽しめる私たちだからこそ引っかかる巧妙なトリックのようにうわあああこれ以上はネタバレ防止装置がああああ…!

とにかくヒロインの女子高生ココネ(心羽と書いてココネと読ませる)は、現実と夢の中を行ったり来たりするのだが、虚実入り乱れた描写になかなか悩まされる。良い意味で。

物語の舞台は東京五輪が目前に迫った2020年の日本。(そして機械の王国ハートランド)某業界と科学分野へのリスペクトも感じられる内容。うっかりすると、「ニッポンっていいなあ」と思っちゃいそうだったが、業界関係者はどう感じたのだろうか。研究職・技術者の人はある部分で「いやいやいやいや!」と心の中でツッコんだことだろう。そうでない一般人の私でさえツッコんだのだから(笑)ファンタジーと見せかけて、実は日本の一部分を描いているというのが「大人のファンタジー」という意味なのではと思う。

割と世間の評価が厳しいようだが、ココネを演じた高畑充希が歌う主題歌については概ね評判が良いようでホッとしている。充希ちゃん…さすが、朝ドラ女優やで…。でもこの主題歌「デイ・ドリーム・ビリーバー」は実は本編にとてもハマっている主題歌なので、主題歌の評価高いついでに本編の評価も上がらないかなーと期待しているのだが。オリジナルを歌ったモンキーズはこの曲で恋人のことを歌っているが、それをカバーしたザ・タイマーズのバージョンでは母親のことを歌っているらしい。ザ・タイマーズ版を今回高畑充希がカバーしてるんだけど、つまりココネが母親を想って歌っていることになり本編と合致する。一応、アーティスト名義も「森川ココネ」だし。(iTunesでDLして聴いてる)では、オリジナルのモンキーズ版は誰が歌えばいいのかというと(別に誰かが歌わなきゃいけないわけじゃないけど)、ココネの母親のかつての恋人だった人…。そう!つまり!モモタロー!お前だ!!というわけで、主題歌の原曲はココネの父モモタローの想いを、そこから派生した主題歌はココネの想いを歌っているという、これは完全に本編と合致する流れではないか!後はモモタローを演じた江口洋介が原曲を(つまり英語で)歌ってくれれば完璧なんだけど!!!!アリだと思います!!!!!
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