シンタロー

田園に死すのシンタローのレビュー・感想・評価

田園に死す(1974年製作の映画)
3.7
鬼才・寺山修司によるカルトムービー。恐山近くの凋落。少年時代の"私"は狂った柱時計が鳴る貧しい家で、朝から晩まで仏壇を磨き続ける母と二人暮らし。隣の家に嫁いできた美しい新妻に憧れ、村にやってきた妖しい見世物小屋に刺激を受ける。母は腕時計が欲しい、包茎手術がしたいという"私"の望みを却下し、いつまでも子供扱いして家に縛りつけようとする。そんな不満を恐山へ参り、イタコに降りてきた亡き父にぶつけるのだった。ある日、姑にいびられ、家に馴染めない隣の新妻から、一緒に駆け落ちしようと誘われる…と、ここまでの物語は、現在の"私"が映画監督になり、過去を美化し、虚構化した自伝映画だったのだ…。
うーん、これも何回も観ているが、何とも言い難い、難解な映画。寺山の自伝的作品なだけに、郷愁にあふれているけど、映像やカットはとても前衛的で革新的。ドラッグでもキメてるように幻想的で官能的。中盤に描かれる本当の過去は、私生児を身籠り、村八分にされる女の末路や、憧れだった新妻の正体など、非常に残酷で陰鬱。現在の"私"と、過去の"私"が出会う後半。描きたかったのは母親との対峙なのかな。決別したいけどできないジレンマ。うーん、やはりわからない所多過ぎ。でも独特な映像と音楽に浸ってるだけで、十分楽しめます。
演者の芝居云々はあまり関係ない本作ですが、過去の"私"演じる子役・高野浩幸は好演。後にカッコよく成長してアイドル歌手なんかもやってました。村八分にされる憐れな女であり、"私"をレイプする強烈な演技は新高恵子。ポルノ出身なだけに出し惜しみ無しです。カオスな中で、唯一の癒しとなるヒロインに八千草薫。出番が少ないのは残念ですが、相変わらずの美しさにみとれてしまいます。
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