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淵に立つのamuのレビュー・感想・評価

淵に立つ(2016年製作の映画)
3.6
カープファンである私にとって赤といえばカープの色というイメージがあり、エネルギッシュなこの色をチームカラーとしているのは日本球界において他に無い。

その昔、カープへ来た日本球界初のMLB出身監督がまず最初に改革を行ったのが球団の帽子の色を赤にすることだった。燃える闘志を全面に出すという理由からで、赤ヘル軍団という言葉もここからがスタートのようだ。

現在、ビジター試合においても、ファンの多さも手伝ってまるでホームゲームかと思わせるほどスタジアムを真っ赤に染め圧倒する。なんていうか純粋にこの色は強そうに見える色なのだ。攻撃的だし、赤色が人に与える印象は、想像以上に強い。

ただそれらはスポーツマンシップにのっとった闘魂カラーとしてなわけで、それだけがこの色の持つ意味ではない。逆に私のような「カープカラーだよ!」と思う者はごく一部の話で、本来は血や肉、はたまた怒りや衝動といった表現として使われることが多く、恐ろしい意味合いを連想させる色だ。スターウォーズにおけるダークサイドに堕ちた者達のライトセーバーの色が皆、赤なことなどがその例である。

今作の恐ろしいところは、スプラッター的に血が吹き飛ぶわけでも内臓をえぐられるわけでもないのに、人間に潜む狂気を様々な赤色で表現したことで視覚に訴えてくるところだ。汚れひとつ無いような真っ白いつなぎのファスナーを下ろし中のTシャツが見えた時の衝撃は相当なものでした。恐怖とともに、なんて巧い表現なんだ!と度肝抜かれました。また選んだ赤の色が絶妙。

そこへ浅野忠信さんの怪演がピタリとハマり、もう何もかもが怖くなってくる。歩く姿を後ろから追うカメラワークでは、浅野さんの肩甲骨までもが怖かった。つまりはいつも白い服に身を包む八坂(浅野忠信)だけど、凄まじい肉と血と骨が、画面に現れずとも存在を感じるほど常に赤がその印象を残し続けた。それは作品のエンドロールが流れ、そしてそれを終えても。


…おまけ感想…

ヒゲメガネの旦那さん。これわざと(演技)なのか、下手なのかよくわからないけど、いちいち返事やリアクションの間が悪くてこういう人すごい嫌い(笑)

河原で急にカラスの真似する八坂、ちょーうまいけど、ちょー怖い。

太賀くん安定の自然体な演技。好き。落ち着く。


ここ数年、や、もっとかな。「クリーピー」とはなんだったのかと思うほどこの作品は比じゃないくらい怖くて、「怒り」のようなエンタメ性の無さがより一層怖さを増しているトラウマ級の作品でした。前情報一切無しに観たので、勝手にあたたかい家族の物語かと思って見始めた時の自分に言いたい。観るのやめとけ、と。今日は前を歩いていた女の子のポシェットが赤色だっただけでビクついてしまいました。
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