鰯

我が美しき壊れた脳の鰯のレビュー・感想・評価

我が美しき壊れた脳(2014年製作の映画)
3.5
Dear Mr. Lynch

34歳で脳卒中を発症したロッチェ・ソダーランド。重い後遺症を患った映像作家自身が日々を記録したドキュメンタリー。製作にはデヴィッド・リンチも参加

何より賞賛すべきは、これを記録しようと思った製作者(監督であり主人公)自身でしょう。意識が回復した直後からスマホのインカメで自らの様子を語り記録する。作中で自身が語るように「何でも記録したがる」という彼女のアイデンティティが脳卒中の前後で変わらなかったという証左なのだと思います。下手に感傷的にすることもなく、彼女自身の感じたことがそのまま表現されている。その言葉は、シンプルだけど深くて耳に残る。「破壊的でゾッとする世界」「現実と夢の区別がつかない」「扉がひらいた」「心は弱くもあり無限の力ももつ」結末は明るくも暗くもない。説教臭いメッセージもない。

高次脳機能障害を負った彼女から見た世界をできるだけ再現しようという映像的な試みは興味深いです。視野の端が曇ったり歪んだり、突然閃光が走ったり。そして、それは彼女にとって美しいものでもあり不安にさせるものでもある。
彼女の前に進もうとするその強い意志に驚きました
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