真田ピロシキ

ガール・オン・ザ・トレインの真田ピロシキのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

アル中で離婚した元夫の家につきまとい、電車の中から見た「理想の夫婦」に自己投影をしている信頼できない語り手の主人公レイチェル。彼女の疑わしい記憶がミステリーの鍵になるのだと思いサイコな展開を想像していたが、まずサイコ女という予断を抱かせることが映画の狙いで主に男性を挑発しているように感じた。

犯人のトム、こいつがなかなか類を見ない腐れ下衆で子供は欲しがるくせに生まれたら面倒見ない上にセックスの相手は常に求めてて、そのために子を疎んじすらする。妻が精神的に不安定なのを良いことに色々吹き込んで罪悪感を覚えさせ支配しようとし、自分が犯した罪すら他人のせいにする幼稚で身勝手なDVハラスメント男の最高峰のような奴。こういうクズ男は恐らく現実に存在するタイプで、昨今マッドマックスみたいな支配的な悪い男を描いた映画が流行ってる中でも特に強烈である。この醜悪な男を嫌というほど見せられて、男性視聴者としては先述した「サイコ女の話だろう」と思って見ていた己のミソジニーを突きつけられたようで居心地の悪い思いをする。B級映画っぽく派手にぶっ殺してくれたならフィクションらしさに安堵を覚えられるのだが、そんな甘い話はない。男の立場で言うと試される映画。