チッコーネ

くたばれ!ヤンキースのチッコーネのレビュー・感想・評価

くたばれ!ヤンキース(1958年製作の映画)
3.5
ボブ・フォッシーの振り付け目当てだったが、本作にはかなり個性が発揮されていたので、観た甲斐あった。
映像も含め最も安定感があるのは『Who's Got the Pain』で、本人も出てくるが、夫婦だけあってグウェン・ヴァードンとの息もぴったり。
残念ながら容姿はいまひとつのグウェンだが、大胆かつ緻密なダンスで、ボブの描く構想を見事に具現化している。
『Whatever Lola Wants』での怪物的な動きは、過去のミュージカル映画における女優の限界(身体的という意味ではなく、イメージ的に)を軽く凌駕、肩甲骨周りの逞しさがすごい。
これで背景の美術が豪華だったら最高だったんだけど。
また同曲については、アビ・レーンバージョンで長く親しんでいたため、勝手にラテンのスタンダードだと思い込んでいたのだが、本作(ミュージカル版)がオリジナルだったのだな。

野球には全く興味がないので冒頭は退屈だったが、たまあそび物語とファウストを融合させるという発想には、大いに救われる。
同調圧力に対するシニカルな視点が、ボブの攻撃的なコレオグラフィーとよく調和していた。