青いむーみん

ありがとう、トニ・エルドマンの青いむーみんのレビュー・感想・評価

4.2
 好きな映画だ。ヴィンフリートのキャラクターは大袈裟じゃなく、その辺に生息するおじさんと想像するに難くない。子供には好まれるであろうフザケ方はやがてあしらわれるようになる。実際この映画内でも物凄くリアルにあしらわれる。そしてそのあしらわれている姿を見せて観客の笑いを誘うような感じでもないのであくまでもこれはコメディではなく、ドラマなのだろうなと感じる。ヴィンフリートの紹介自体はスタート開始ですぐ終わる、周りからどういう扱いを受けているかも。そこからヴィンフリートと娘イネスとの関係、イネス個人の状況を描いていく。ここでは娘が心配でしょうがないけどどうしたらいいかわからない父親という普遍的な問題がひたすら流れているがヴィンフリートの手段は一つしかない。その状態が長い映画なのでここが退屈になる人もいるかも。前述したようにさほど笑わせる気もない感じなので。
 しかし!一つの歌で全てが変わる。歌が転換期になるのだ。問題を感じている本人にその問題の解決策ともいえる歌詞の歌を歌わせるという荒療治。その歌声はまさに実感のこもった最強の声だった。このシーンは個人的に今年一番のシーンになるかもしれないなと思った。ここからは素晴らしい展開が目白押し。この映画ならではの展開でなかなかお目にかかれないものなので是非とも観に行って体験してほしい。