こなつ

わたしは、ダニエル・ブレイクのこなつのレビュー・感想・評価

4.0
2016年80歳にして2度目のパルム・ドールを受賞したケン・ローチ監督の最高傑作。ケン・ローチ監督は、社会的弱者の人々を主役にする監督として知られているが、この作品も貧しい人々が多く住むイングランド北部が舞台である。

ずっと観たかった作品。

イギリス北東部ニューカッスルに住む59歳のダニエル(デイブ・ジョーンズ)は40年間大工として真面目に働いていた。心臓が悪いことがわかり働くことを医師に止められる。国から援助を受けようとするが、制度や申し込み方法が複雑でなかなか思うようにいかない。自分と同じように経済的に困窮しているシングルマザーのケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ)とケイティの二人の子供と出会い、助け合いながら交流していた。やがて厳しい現実が彼らを追い詰めていく。

妻には先立たれているが、ダニエルは曲がったことが嫌いで人情味ある人物。大工一筋のダニエルはPCが扱えないために物事が進まず、デジタル化した社会に対応出来ない。訪れたジョブセンター(日本のハローワーク)は、融通が利かなくて不親切。本当に必要としているのに関わらず、正当な支援が受けられず困窮している人々がいる現実。

貧しい人々に無料で食料や日用品を提供するフードバンク。ケイティは、あまりの空腹に耐えられずその場で缶詰を開けて食べてしまう、その場面が非常に印象的だった。

どんなに貧しくても尊厳を失わず、隣人には手を差し伸べてきたダニエルだったが、やっと道が開けて申し立て出来ることになった矢先、倒れてしまう。

葬儀の日、ケイティが代読した言葉は、ダニエルが申し立てのために用意した悲痛な叫びだった。

真面目に納税してきた善良な市民を冷酷に切り捨てる国家のあり方を痛烈に非難している。ひとつひとつの状況描写がリアルで、日本にとっても決して他人事ではない現実を突きつけられているように感じた。
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