ちゅう

わたしは、ダニエル・ブレイクのちゅうのレビュー・感想・評価

4.7
僕の最も好きな映画監督の一人、ケンローチの二度目のパルムドール受賞作品。彼の過去最高傑作とも言われています。

ケンローチはほとんどの作品でイギリスの労働者階級を扱っており、厳しい現実を突き付けてきます。もちろん単純なハッピーエンドで終わる作品はほとんどありません。けれどもその眼差しはとても暖かく、何故か心温まります。

万引き家族でお馴染み、是枝監督も好きな監督としてケンローチを挙げており、先日NHKで対談をしています。文字起こしをしてくださった方がいるので、興味がある方は是非。少しネタバレがあるのでお気をつけ下さい。

https://note.com/sora8198/n/n50401f0d97db




久しぶりにケンローチ作品観たんですが、やはりすごかった。

良質なドキュメンタリーのようなリアリティ。しかし、観ている者を飽きさせない物語。
登場人物の惨めさ、つらさ、悲しみが高い伝導率で伝わってきて、何回も泣いてしまった。人間の尊厳がいかに傷つくのかを見事に表現している。単なる同情心を煽っているわけではないと感じる。

それは、主人公のダニエルはじめ、主要人物が魅力的に描かれているからこそだと思う。
ダニエルは下町にいそうな、口が悪いけど優しいおじいさん。初めて接すると嫌な印象かも知れないけど、きちんと付き合えばとても暖かい。
ケイティは、考えなしに結婚して失敗してしまったかも知れないけれど、自分を犠牲にしてまでも子供の幸せを考えている。

都会人として日々を忙しく過ごしているとこういう人々の魅力を感じる能力が衰えてしまうものだけど、思い出させてくれる。

この世界のほとんどの人々は善良なんだよ、貧しかろうとなんだろうと。



思想で言えばケンローチはとても極端ですし、重い話でもあるので、敬遠する人も少なくないと思いますが、観れば伝わってくるものが必ずあります。
少しでも興味があれば観てもらいたいな〜とケンローチファンの一人としては思う次第です。
ちゅう

ちゅう