やし

わたしは、ダニエル・ブレイクのやしのレビュー・感想・評価

3.8
2016年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。

2018年『万引き家族』
2019年『パラサイト半地下の家族』

社会問題を絡めて色々考えさせてくれる映画が受賞している印象。

本作も問題提起を感じさせる作品だった。
そして、"怒り"…

これが現実なのか。
こんなにも厳しいのか。

59歳のダニエルは身体を壊してドクターストップを受けている身にも関わらず手当は受給できない。
その手続きの壁は高く、高く、
複雑で不親切で理不尽で、終わりも見えない…

これが本当に弱者のための制度なのか。

オンライン申請でないといけない?
ひたすら電話に出るのを待たなければいけない?
決められた通りに履歴書を書いて配って、しかもそれを証明しなければいけない?
履歴書の講習を受けないと違反?
講習通りに書かないと違反?
最長3年間の支給制限?

形だけの就職活動だから採用されそうになったら断らなければならない。
採用者からしたら、そりゃ「ふざけるな」だわな。

それでもダニエルは前を向く。
間違っていることは正そうとする。
困っている者には手を貸す。
それで救われている人がどれだけいるか。

強く優しく、そして誇り高いダニエル、
相手が"国"でも立ち向かう。


シングルマザーの家族の話も苦しい。
幼い子供2人のために与える精一杯の食事。
でも自分は……。
フードバンクのシーンは衝撃的。
万引き…、子供に靴も買ってあげられない。そして見つけた働き口……。

やるせない。


…が、この映画はそんな"絶望"だけでなく、人間の素晴らしさ、"希望"も示してくれている。


わたしは一人の人間
犬ではない

地位の高い者には媚びない
隣人には手を貸す

尊厳を失ったら終わりだ
やし

やし