TAK44マグナム

キル・コマンドのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

キル・コマンド(2015年製作の映画)
3.4
標的は人間!


VFX畑のスティーブン・ゴメス監督によるSFコンバットアクションスリラー。
主演のヴァネッサ・カービーは「ミッション・インポッシブル/フォールアウト」の武器商人ホワイトウィドウ役で有名ですね。
「ワイルドスピード」のスピンオフである「ホブス&ショウ」にも出演しているみたいです。


近未来。
ロボット産業が世界を動かしている時代。
軍のコマンドチームは、ロボットを標的とした戦闘訓練を続けていた。
繰り返される訓練に嫌気がさしてもいたが、また新たな訓練命令が下る。
しかし、今度の訓練は最初からいつもと状況が違っていた。
ロボットを生産する会社から技術者が同行する事になっていたからである。
技術者は美しい女性であったが、脳とリンクする超小型のコンピューターを埋め込まれたサイバーでもあった。
そのブルーアイズでありとあらゆる機器を操る(寺沢武一の「ゴクウ」?)彼女の名はミルズ。
実は、訓練場である孤島に配備されたロボットが独自に再プログラムを繰り返しており、その原因を探るための同行であった。
一堂は孤島に降り立ち、2日間の訓練を開始、最初のミッションでは無事に標的のロボットを撃破した。
だが、その夜から状況が一変する。
ロボットは兵士の1人ロスタフを拉致、それを追った部隊は彼の変わり果てた姿を発見する。
ハッとなったミルズが言った。
「ここは、昨日の標的を破壊した場所よ」
次の瞬間、どこからか攻撃を受け、1人が狙撃されてしまう。
尾根を見ると、ロボットが群れをなしていた。
そう、標的がミルズ達に変わったのだ。
今度は、人間がロボットの訓練で狩られる立場にあった。
はたして、ミルズ達は無事に脱出することができるのであろうか・・・?!


おそらく低予算の作品だと思うのですが、CG関係がそれなりに高水準なクオリティなので、「スカイライン-征服-」の様な、VFXの技術をみせるためのカタログ映画なのかもしれませんね。

現実にも、いまはドローンを始めとしたハイテクの無人兵器による戦闘が普通に行われていて、もう何年もしないうちに人間の兵士が前線で戦う戦争が過去のものになってもおかしくありません。
本作に登場する無人兵器群は超未来的なものではなく、あくまでも現実の延長線上にあるものとしてデザインされているので、本当に近い将来、この映画はSFでは無くなるのではないでしょうか。

ある意味、本作の主役であるロボット兵器は多脚歩行の非人間型ですが、それは決して妄想に収まるものではありません。
似たようなロボットは既に存在しますし、軍事利用も当たり前となっています。
現実に稼働しているロボット(ドローン)兵器で最も有名なものは映画やゲームにも多く登場するようになったMQ-1プレデターやMQ-9リーパーですが、これらは目標地点にミサイルを撃ち込む遠隔操作可能な無人攻撃機ですね。
本作に登場する陸戦用無人兵器となると最も知られているのがアメリカ製のタロンでしょう。
遠隔操作によりキャタピラで移動し、装備された兵装で離れた地から敵を攻撃する小型のロボット兵器で、実際に中東などで二万件以上のミッションをこなしています。
更に武装強化したSWORDS、組立ユニット式に進化され、レーザー兵器まで装備したMAARS等、日進月歩で進化しているのが軍事用ロボットであり、これがA.I.技術と融合すれば本作のようなアクシデントがいつ起きるか分からないのです。
そのリアルっぽさが、例えば「ターミネーター」と同様に作品の大きな魅力となっているのは間違いありません。
加えて、ゲーム世代に訴えるクールなビジュアルや、ミリタリーファンが好みそうな銃器や兵装も見逃せない要素でしょうね。


お話的には単純で、シュワちゃんの「プレデター」の宇宙人をサイボーグに変えてモロにパクった「サイバーロボ」を発展させたようなもの。
特に深いテーマを語るわけではなく、昨今のSFによくありがちな「A.I.やロボットの暴走は怖いよね系」です。
そんな内容と相まって、ロボットが人間を襲う「ハードウェア」や「デスマシーン」、A.I.が無骨な非人間型ロボットを操る「ガンヘッド」などを超進化させたビジュアルこそが最大のウリ。
若干、CG合成が安っぽく感じる箇所もありますが、概ねロボットとのバトルは大作映画に引けを取らないレベルを保っています。
ただ、登場するロボットの種類がボス級の大型ロボットとライフルを装備した攻撃用ロボット、それに監視用の飛行ドローンぐらいしか無いので、あと2、3種類のバリエーションが欲しかったかな?
例えば水中用とか、ドリルを装備したモグラ地雷とか。

途中少し中弛みもしますが、追い詰められた人間VS追い詰めたロボットの最終決戦は、規模は小さいものの見応えはありました。
目にカメラを組み込んでいる狙撃兵が、ライフルのスコープと目をリンクさせて、相手が見えないまま狙撃してゆくのは格好良かったです。


ラストはパニックホラーによくある不穏な締め方。
もっと予算をかけて、今度は都市部でロボット兵器が殺戮のかぎりを尽くす続編があったら観たいですね。
いや、あれかな・・・また中途半端にお金かけれなくて、ビルの中をロボットが徘徊する「キルボット」みたいなのになっちゃったりして・・・(汗)

特にこういったロボットやらミリタリーに興味が無いと退屈なだけの映画なので、一般層には残念ながらオススメできません。
SF系のシューティングゲームを映画におとしこんだような作品なので、「ゴーストリコン」や「タイタンフォール」が好きな方向けかと思いました。


NETFLIXにて