てるる

十年のてるるのレビュー・感想・評価

十年(2015年製作の映画)
3.5
観たのが去年か一昨年なのでうろ覚え。

変わりゆく香港を憂う5人の監督が、個別のストーリーを描くオムニバス。

しかし5編全てに共通しているのは、希望よりも絶望感や退廃感の方が強いということ。

大陸でしか活動してこなかったならいざ知らず、香港で民主主義によって育った文化人やクリエイターには恐ろしい予感しかなかったんだろうな。

ひたひたと押し寄せる中国共産党の足音。
表現の自由が奪われ、言論や行動が監視される社会。

予想外だったのは、現実の香港がこれ程までに早く民主主義が崩壊してしまったこと。

香港では2015年、日本では2017年に公開。
その当時はこの監督達も、日本で観た観客もこんなに早く事態がひっくり返るとは思ってなかったと思う。

中国政府にとっては映画やドラマ、出版物はプロパガンダの1つとしか考えてない。
だから検閲も厳しいし、中国万歳!を謳う作品が増えている。

そしてそんな中国政府により国粋主義に走る人達が増えているのが怖い。

そんな人達にとって、何故中国が世界からこんなに嫌われているのか本気で理解出来ないらしい。

中国の若者数人にインタビューした記事で、「中国が強くなれば、日本は中国を兄貴分と慕ってついてくるはず!」と本気で言っていたのが何よりも恐ろしかった。

そして1970年代~90年代あたりまでの香港映画が大好きだった身としては、今の香港映画には哀しみしか感じない。
てるる

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