IT イット “それ”が見えたら、終わり。
虚実入り混じる心理ホラーも、その裏の意図を勘繰らせる
変な映画でした。
つくりは確かにホラー。
ビクつかせるための音と急な動き。
出てくるキャラクター自体に怖さは無いものの、いかにもホラーらしい演出の数々で、そこそこ驚かせてくれます。
でも、ずっと怖いというのではなく、少しビクッとさせるのの連続。
何度も同じのが出てくるので、だんだん慣れてくる。
子供の時は確かに、ピエロという存在が怖かったような記憶もあるが、今となっては、滑稽さの象徴というか、むしろ見てて、もの悲しさを感じるような存在。
ピエロと同様に、少年・少女たちが最も恐怖を感じる存在そのものが具現化されて画面に映される訳なのだけれど、それも大人になった今となっては、怖さは弱い。
異形の者より、普通の人間の方が恐ろしいことが多々あることを僕たちは知ってしまっている。
ただ、劇場での体験として印象的だったのは、隣で観ていた高校生らしき集団が何度も席が揺れるほど驚いていたこと。女の子が小さな声で「怖いんだけど…」と隣の男の子に語りかける声まで聞こえてきた。
ひょっとすると、若い世代には、ちゃんと怖い映画になっているのかもしれない。
でも、本気で怖がらせることだけが目的だったら、もっと違ったやり方があると思う。
そもそもの作り方が雑だと言うのは、誰もが認めるところじゃないだろうか。
1つ1つのエピソードが切れてしまっていて、連続性が無い。積み重なる感動がない。
少年・少女共に大人に対し、何らかの恐怖心を抱いていることはわかるものの、その説明が薄く、真に迫ってくる感じがない。
でも、監督が出したいメッセージは如実に伝わってくる。
「ルーザー」と呼ばれる彼ら・彼女らが囲まれる苦境への抵抗。
狂気のピエロに具現化した苦境に真正面がら立ち向かって行く。
傷つきながら、もがきながら、自らの恐怖の対象そのものに化すピエロと戦い続ける。
大人に抑圧されるばかりだった彼らが結束し、最も怖い存在を打ち負かそうとする。
そこにカタルシスが生まれない訳がないじゃないか。
虚構と現実の狭間で(全て虚構ではあるのだが)彼らの生死を分けたものが何かは分からない。
しかし、現実は創作以上に残酷なこともある。
そんな残酷な現実をいかに生きるか。
強い心を持ち続けること。
固い絆で結ばれた仲間をつくること。
もう少し背景を描けたら良かったのにと思うが、ホラー映画としては、これで正解なのかもしれない。
『ストレンジャー・シングス』早く観なきゃなぁ。