もやし畑

ハクソー・リッジのもやし畑のレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.0
ハクソーリッジ。即ち前田高地。

時は第二次世界大戦。デズモンド・ドスは信心深いキリスト教信者で、信仰心から不殺を誓っている。良心的兵役拒否ができる身でありながら、彼は陸軍の救護班を志願する。彼は沖縄戦におけるハクソーリッジ(前田高地)の戦いで、銃を握ることなく負傷兵の救護に奔走する。

「汝殺すなかれ。」戦場における最大の矛盾だ。正直言って、デズモンドの考えは甘いし、みんなそんな考えでは軍隊が成り立たない。しかし、彼がいたから救われた命があることもまた事実である。一方で、一人の信仰心では全体の局面はどうにもならないこともまた事実なのである。

信心を貫き通したデズモンドの視点と同時に、今作は自然と日本側の視点でも見ることになる。
砲撃、爆撃、銃撃、火炎放射、蹂躙される光景はまさに悪夢だ。何より、焼け野原と化した沖縄の風景は胸を締め付けた。

沖縄の土地を蹂躙するアメリカ兵にしても、撃っても撃っても襲いかかってくる日本人にしても、お互いがお互いを悪魔と思っていたことだろう。

戦争は殺しが正当化される異常空間を作り出す。戦争の惨さが実によく描かれた一見の価値がある映画だった。
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