さき

ハクソー・リッジのさきのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.8
公開から約2週間、ようやく観れました。観るまでは皆さんのレビューを読まないと決めていたので、やっと読ませていただきました。皆さんのようにいいレビューが書けるかわかりませんが頑張ります。

舞台となった場所で分けて3部で構成されていたと思うのですが、そのどれもで心揺さぶられる言葉や行動があり、ハンカチが手放せませんでした。また、3部に分かれてはいるけれど、そのどれもが個々に完結してるのではなくて、うまく繋がっていて伏線じゃないけどそんな風に感じられるものもあって感動が増幅させられました。

冒頭の兄弟の2人のうちの1人がまさかこの物語の主人公になるとは思えないほどやんちゃで、周囲の人たちにも「ドスのとこの子か…」なんて言われてるくらい。そんな子が人を殺めてはいけない、銃を持たないという信念を持つまでを詳細に描いていたわけではないけどものすごく丁寧に描いていたので、その原因の一端である父親との葛藤の端々にいろんな人に対する愛のようなものを感じて泣けました。それから、弟ハルが入隊すると決めたときの父親に大いに泣かされました。父子の関係、父の感情はここまでで十分承知していたので、その後の裁判の場面での父の不器用な人間の最大の愛情表現のような感じがして嗚咽がもれるほど泣きました。

デズモンドの入隊後の訓練のシーンでは、軍曹をはじめとして同じ部隊にいるひとりひとりの兵隊に愛着が湧くように描かれていたので、私も例に漏れず、兵隊ひとりひとりに愛着が湧きました。また、デズモンドが信念を貫いた先でやられた仕打ちみたいなのが辛くて、泣きました。

舞台が沖縄に移って、まず感じたのが歴史観の問題です。大学で歴史について学んでいる私は文章を読むだけではわからない歴史観を見せつけられた気がしました。昔は戦争映画といえば、日本人が作った日本目線の話ばかり観ていました。でも最近は例えば中国やアメリカ、ドイツなど第二次世界大戦に参戦した国々の作ったそれぞれの国目線のものも観るように心がけてました。今作でいえば、沖縄戦といえば、日本で唯一地上戦が行われ、民間人が大勢亡くなった最悪の戦闘、アメリカ軍がどんどん兵を進めていった、というのが日本目線で見た沖縄戦であると思う。でも、今作では、アメリカ目線で沖縄戦を見ていて、戦争末期で死に物狂いでお国のために向かってくる日本兵、作中でも一回台詞に出てくるパールハーバーに代表される、日本軍の奇襲作戦など、アメリカ兵にとって日本軍がまるで狂気のように写っていたことがわかるような場面が何度かある。ここはこの映画の趣旨とは少しズレるが、この作品を日本人である私たちが観るときどうしても感じてしまうことのひとつかな、と思いました。あとは、なんといっても、肉弾戦の迫力と残酷さ、あれだけ愛着が湧いた兵隊たちが次々にやられていく様、目を伏せたくなる。そんな兵隊たちをひとりで銃も持たず、次々に助ける主人公の信心深さと信念にはただただ感動されられるばかりでした。あんな人間生活の中で起こるか起こらないかくらいの極限の中で信念を貫き、あんな行動は普通できない、むしろ、私なんか普段の生活でも信念を貫けないのに…

デズモンドが兵隊を助けるときに口にするのが、「大丈夫、治る」ではなくて「大丈夫、もうすぐ家に帰れる」であるのが印象的でした。自らも含め、皆、故郷には自分を待ってくれてる愛する人がいる。兵隊だってひとりひとり人間。そんな当たり前のことだけど、戦争映画ってなるとわすれがちなことを改めて感じたし、デズモンドの愛に溢れた素敵な言葉だなと思いました。

長くなりました。
最後まで読んでくれた方、ありがとうございます😊
さき

さき