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緑色の部屋のpikaのレビュー・感想・評価

緑色の部屋(1978年製作の映画)
4.5
至高の愛とはこのことか。ここまで全て「愛」をテーマに様々な角度から描いて見せたトリュフォーの行き着いた、一種の到達点のような究極の愛があった。
一貫して突き詰め自身の全てをかけて貫き通し、映画的な劇的さを用いることなく一切ブレずに表現しきった愛の形は圧巻!凄すぎる!

「蝋燭3部作」の1作として作られた今作の蝋燭の意味の深さ、画面表現の意図など雰囲気だけでなく画面ひとつで表現しきるほどのパワーがあり、言葉なくとも役者の眼差しや行動で情熱が満遍なく伝わる凄さ。ジワジワと坂を駆け上るかのようにこちらの感情の波が高まり、「んなアホな」と俯瞰していた感情がラストで一体となり胸を熱くさせる見事な演出。
どこが始まりだったかトリュフォーの作品の中で4〜5作ほど「資格」という概念が出てきていて、「あなたに触れる資格」「あなたを愛する資格」相手に受け入れてもらう「資格」を手にしなければ触れられず愛せないという概念なのか、トリュフォーの愛に対する臆病で情熱的な姿勢を垣間見る。

見終えて全く整理が付かず未だにパニック状態。40年ほど前の作品なのに今までもこれからもこんな映画は他にないだろうと思えるくらいに独特、いや孤高の存在感。
トリュフォーが渇望し人生を懸けて描き続けてきた永年のテーマである愛の、自身が到達できなかった形を映画に込めて、狂気とも言える主人公を自らが演じ真正面から真摯に向き合うことで体現し昇華したのかもしれない。
トリュフォーの激情と愛がスパークしている大傑作!
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