緑色の部屋の作品情報・感想・評価

「緑色の部屋」に投稿された感想・評価

遺作「日曜日が待ち遠しい!」より、濃厚な死の匂い。
近しくなっていく女性が、かつて主人公と袂を別った友人の愛人という皮肉。
pika

pikaの感想・評価

5.0
至高の愛とはこのことか。ここまで全て「愛」をテーマに様々な角度から描いて見せたトリュフォーの行き着いた、一種の到達点のような究極の愛があった。
一貫して突き詰め自身の全てをかけて貫き通し、映画的な劇的さを用いることなく一切ブレずに表現しきった愛の形は圧巻!凄すぎる!

「蝋燭3部作」の1作として作られた今作の蝋燭の意味の深さ、画面表現の意図など雰囲気だけでなく画面ひとつで表現しきるほどのパワーがあり、言葉なくとも役者の眼差しや行動で情熱が満遍なく伝わる凄さ。ジワジワと坂を駆け上るかのようにこちらの感情の波が高まり、「んなアホな」と俯瞰していた感情がラストで一体となり胸を熱くさせる見事な演出。
どこが始まりだったかトリュフォーの作品の中で4〜5作ほど「資格」という概念が出てきていて、「あなたに触れる資格」「あなたを愛する資格」相手に受け入れてもらう「資格」を手にしなければ触れられず愛せないという概念なのか、トリュフォーの愛に対する臆病で情熱的な姿勢を垣間見る。

見終えて全く整理が付かず未だにパニック状態。40年ほど前の作品なのに今までもこれからもこんな映画は他にないだろうと思えるくらいに独特、いや孤高の存在感。
トリュフォーが渇望し人生を懸けて描き続けてきた永年のテーマである愛の、自身が到達できなかった形を映画に込めて、狂気とも言える主人公を自らが演じ真正面から真摯に向き合うことで体現し昇華したのかもしれない。
トリュフォーの激情と愛がスパークしている大傑作!
Jnhgtr

Jnhgtrの感想・評価

4.6
これと『O侯爵夫人』がアルメンドロスの最高傑作だと思う。『天国の日々』もいいんだけどね。
崇敬するIホール初代総支配人様㉑

本作品の初鑑賞も40年近く前。
きちんと内容を理解できる年齢ではなかった。

年月は流れ、他の作品や自身の体験から観る方向によって全く形が異なる立体化されたいびつな愛の形も感じられるようになり、それと同時に生死に拘わらず愛別離苦とも向き合うことが出来るようになってきた。
その間、本作品とも2度ばかり再鑑賞する機会にも恵まれている。
作品に関しては、他サイトの解説やレビューと重複するので…


毎度おなじみの祖父の話を。
鑑賞後ひどく本作品に共感したらしく、涙を流していた。
私は祖父の涙を見るのは初めてで、どうしようかと戸惑っていると席から腰を挙げてこんな話をしてくれた。

『じいちゃんな、若い頃ものすごく好きな女性がおったんや。縁がなくてな…一緒にはなれんかったんやけどな。身体が弱くてな若くして死んでもうた。その人がクリスチャンでな、今でも親戚連中からはやかましく言われるけどな、それでじいちゃんもクリスチャンになったわけや。』
クロスのペンダントをいつも身に着けていた。
おそらく、このサイトの『1票のラブレター』で書いたエピソードの女性なのだろう。
私は必死に反対したのですが、結局祖父は仏葬で見送られました…

~追記~

なんの本だったかは忘れましたが、Iホール初代総支配人Tさんとトリュフォーとのこんなエピソードが書かれていました。

ある日本の監督さんからの依頼で、Iホールでの上映(緑色の部屋)の話が始まったそうなのですがTさんは少し不安になったらしくトリュフォーに
『私どものこんな小さな劇場で本当に構わないのでしょうか?』
といった旨の手紙を書いたところ、
『あなたの劇場で過去に上映された作品を拝見させて頂きました。素晴らしい作品の数々に感動しました。もし私の作品を上映させて頂けるなら私はキャンペーンのために自費で日本へ行かせて頂きます。』
といった返事が返ってきたそうです。

祖父は最初の上映作品から観ていてチラシを保管してあったので調べてみたところ、緑の部屋が上映されるまでの作品はメジャーどころの監督で、
サタジット・レイ
ロベール・ブレッソン
イングマール・ベルイマン
スティーヴン・ザイリアン
ジャン・ルノワール
フェデリコ・フェリーニ
アンドレイ・タルコフスキー
ルイス・ブニュエル
ルキノ・ヴィスコンティ
カール・テオドア・ドライヤー
エルマンノ・オルミ
テオ・アンゲロプロス
etc…
約40作品
確かに凄まじいラインナップ。

約束通り自費で来日したトリュフォーは、帝国ホテルに宿泊し宿泊代から食費にいたるまで全て自身で払っていたそうです。
さすがにTさんは恐縮してしまい、
『私にも何か払わせて下さい』
と懇願したところ、
『それなら』
と、数日後サンドウィッチ1皿分の請求書が届いたらしい。
トリュフォーの心遣いに敬服したとのことです。

☆★☆ナタリー・バイ☆★☆
(*´з`)(*´з`)(*´з`)(*´з`)
Momoka

Momokaの感想・評価

3.9
第一次世界大戦から10年後。愛する妻や多くの友人を亡くし、生きている者を愛せず思い出の中に閉じこもってしまっているトリュフォー演じる主人公。死者を忘れずに思い続けることも大切だけど、自分が今生きている現実をいつまでも受け止められない姿を見ているのは辛い。そんな彼に密かに思いを寄せて見守る女性も健気でいじらしかった。
白黒の酷い戦争の映像と、男性の奥さんの思い出が詰まった緑色の部屋やロウソクの燃え盛る教会。現実の闇の部分を包み隠さず映しながらもそれを癒すようなぬくもりも感じられる。目に涙を浮かべてロウソクの間に映る女性のラストシーンが美しくも哀しくて頭から離れない。
ai

aiの感想・評価

3.4
“緑色の部屋”とは、若くして死んだ奥さんの遺品や肖像の飾られた部屋。死者との思い出の部屋。
それだけでは飽き足らず、礼拝堂を作り自分の愛した人たちを祀り、どんどん閉じ込もってしまう…
最後まで男の業は変わらない。

冷たく無機質になりがちなストーリーだが、どこか温もりさえ感じてしまう不思議な作品だった。
異質な男の話だが、どこか人間らしさを感じてしまうのは、ロウソクの灯りなど自然光での映像美、トリュフォーの演技であろう。

かなり昔に鑑賞したが、トリュフォー作品で1、2位を争う良作であると思う。
knight

knightの感想・評価

3.6
死者を忘れず、自分の人生を忘れてしまったら、ちょっと辛過ぎる。

全体を通して感じる気配が、死を扱っているのに、不穏ではなくて、どこか甘い感じがする。
この雰囲気は嫌いじゃない。
危険な事なのかもしれないけど。。

役者としてのトリュフォーが、作品に溶け込み過ぎててそれだけで見られた。
mstk

mstkの感想・評価

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2014/10/14
@角川シネマ有楽町。FCで観て以来十数年ぶり。死者しか愛せない男が現世の美女との間で煩悶する、というのはある種のホラーか。
戦争、死亡記事、遺影に遺品、とどこまでも死に彩られた世界を照らす蝋燭の炎は、あの世とこの世を繋げているのか。
14.10.14@角川シネマ有楽町「没後30年フランソワ・トリュフォー映画祭」