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忍びの国のYASUUのレビュー・感想・評価

忍びの国(2017年製作の映画)
3.5
本作は『のぼうの城』の和田竜が原作。
『のぼうの城』と同じく史実を元にしていて、
1579年に起こった第一次天正伊賀の乱が題材になっています。
当時、伊勢国を納めていた織田信長の次男・信雄の軍と忍者集団の伊賀国郷土衆との戦です。
織田信雄は「おだのぶお」ではなく「おだのぶかつ」と呼びますので間違えないように。

史実ですからこの戦の結末を言うと、伊賀国郷土衆が勝利します。

本作で伊賀国郷土衆の中心的な人物として登場するのが、大野智演じる無門です。
この無門のキャラクター設定が、一見頼りない風体だが、実は伊賀一番の凄腕忍者。
冒頭のシーンでは同じ伊賀の里の隣村村長の次男坊(満島真之介・演)を「川」と呼ばれる一対一の戦いで殺害してしまいます。
殺害動機も金のため。金のためなら人殺しでもなんでもする。
この人間らしからぬ性分は無門のみならず、伊賀国郷土衆全員の根本的な性分になっていて、すべての事の発端がこれが原因となっています。
と言って本作が暗い作品になっていないのは、主役を演じている大野智の飄飄とした風体からなんでしょうね。
実に主役の無門をうまく演じています。
というより大野智という人物が無門そのままなんでしょう。地で演じていますね。

妻・お国を演じる石原さとみとの夫婦の掛け合いもまた面白いです。
お国は無門がある国から誘拐してきた武家の娘で、怯むことなく、無門が「四十貫稼ぐようにようになるまでは夫婦の契りは結ばない」と彼を家から追い出してしまいます。
完全に尻に敷かれた彼の姿に世の男たちは共感してしまうのです。当然、僕も同じ。

嵐の中でも一番目立たない存在のように感じる大野智(ファンの方、ごめんなさい)ですが、
無門の難しいキャラ設定を演じられるのは彼しかいないです。
大野智の演技に脱帽です。

難点を言えば、忍術のCG処理がちゃちなこと。費用の問題もあるので、仕方ないかと思いますが、ハリウッド作品並みを期待してはいけないのかな?
でも大野智を始め、鈴木亮平、満島真之介の身体を張ったアクションは見応えがありました。
いっそのこと、剣術を含め、香港映画みたいな身体を張ったアクションをメインにしたらよかったのに。
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