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メリー・ポピンズ リターンズのSY3KRのレビュー・感想・評価

3.0
世紀の大傑作である『メリー・ポピンズ』の続編を、ミュージカルの名手であるロブ・マーシャル監督が手がけた。彼の経歴から言えば納得だが、批評家層から支持されたのは『シカゴ』だけという実力を踏まえると、どうも無難すぎる選択だ。

前作と比べて映像美は圧倒的な進化を遂げており、メリー・ポピンズの奏でる夢の世界がカラフルに演出されている。従来の世界観と現代の技術の融合であっという間に心は鷲掴みにされ、これだけで続編を世に放った意味はあった。

サンディ・パウエルの考案した衣装はワンシーンごとに実に色とりどりで、非常に目を惹く。背景がアニメーションになろうが、大掛かりなセットになろうが不自然に浮き立つことがなく、コントラストを完璧に計算し切っているのだから鳥肌が立つ。

主演のエミリー・ブラントはジュリー・アンドリュースに及ばないとは言え、威厳や意志の強さを保ちつつ、子供たちに対する思いやりや優しさを忘れない母性も兼ね備えており、納得のキャスティングだ。これまで苛烈な状況下に置かれる役柄が多かった彼女にとっても、新境地になったのではないだろうか。

一方で肝心の音楽のインパクト不足は否めない。また、どうも話の展開が前作を思い出させる方向に媚びすぎており、これではリターンズではなくリメイクになってしまっている。わざとらしく貧富格差の問題を強調するあたりも最近のディズニーらしい「蛇足」で、なんだかなあと思わさせられる点も多かった。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:80%
・観客支持率 :65%
「本作は前作の魔法に倣ったお馴染みの、しかししっかりとした効果を持つ、家族向けの魔法をかけることに成功している。」
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