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世界にひとつの金メダルのsayuriasamaのレビュー・感想・評価

世界にひとつの金メダル(2013年製作の映画)
4.2
人馬一体で掴んだ、金メダルへの道

実は私、馬の活躍する競技が好きでして...スポーツとしての競馬も気になりますし、(なお、馬券はさっぱりです...)オリンピックの馬術競技もロンドン、リオとネット中継でライブ観戦してました。なので、ルール、特に本作品で取り上げられているピエールの「障害飛越」の種目は大方分かって見ていました。

オリンピックの馬術競技は3種目あり、
①馬場馬術(最高齢オリンピアンの法華津選手が有名。馬を決められた方法で歩かせたり走らせたりする種目。動きの正確さだけではなく、上位争いでは芸術性も問われ、いわばフィギュアスケートのような種目。)
②障害飛越(本作品で取り上げられた競技。馬場にハードルが置かれ、決められた順序で飛越していく。より早く、より正確に飛ぶことが勝利への道。落馬した時点で競技は終了。現在華原朋美さんが参戦中。)
③総合馬術(初日:馬場馬術、2日目:クロスカントリーと呼ばれる、自然にある勾配を生かした、障害つきのコースを走る種目。映画中、少年時代のピエールが参戦していた種目。3日目:障害飛越をこなす競技。落馬した時点で終了。人馬のタフさ、陣営のコンディション調整力も問われる。) となっています。
ピエールデュランは②の種目のソウルオリンピック個人の金メダリストであり、そこへの道のりを描いた作品です。

あらすじ:ボルドーのワイン畑を切り開いて馬術学校を作った男の息子、ピエール。(ギョームカネ)彼は一時は馬術をあきらめ、弁護士として生きていた。しかし、1頭の小柄で気性の荒いジャップルーという馬と出会い、再び馬術競技に打ち込む。

映画ではピエールの愛馬、ジャップルーとの出会いから、ロサンゼルスオリンピックでの落馬、そこからの活躍、そしてソウルでの大活躍を人馬共々の成長をゆっくり、時系列に沿って描かれています。(オリンピックに出場する馬には年齢制限があり、確か8歳以上と、競走馬に比べ高齢にならないと出られなかったはず。そのため、オリンピックに出るまでが少々長い...)

障害飛越の種目は落馬や飛越拒否といった目に見える失敗だけでなく、リズムがずれたまま競技を続け、結果ミスによってペナルティが加算され上位を逃す、といった緊張感が続くので、そこが映画に緊張感を与え、締まった作風になっていました。また、競技そのものの緊張感だけではなく、競技会の間に芽生える葛藤や家族の絆,自前の馬運車で父子二人三脚で参戦する若き日々、フランス代表監督との溝、スポンサー集め(馬術はとにかくお金がかかる...)等々人間ドラマも丁寧で清々しい作品でした。

役者も結構良かったですねー。
特に、主演のギョームカネが馬術経験者なのが大きいのですが、吹き替えをしないで演じているので競技会の中継とは一味違ったダイナミックな映像が楽しめるのがすごく良かったです。また、荒馬を世話する厩務員の頑固さもキュートでしたし、ジャップルーの購入(いわゆるトレード)を持ちかけたドナルドサザーランドもいい味でした。
役馬も素晴らしく、特に失敗する演技は大変だったのでは?とも思いました。

邦題で映画のラストがネタバレ状態ですので、爽やかな気持ちで見られます。静かな話ではありますが、馬が駆ける足音や躍動感はスクリーンで見て良かったなあと思える作品でした。

追伸:劇中、10ccの"I'm not in love "が流れていてびっくりでした。

さて、東京五輪の馬術会場は馬事公苑ですが、昼間、長時間は見るのは辛いなあ...
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