いずみたつや

哭声 コクソンのいずみたつやのレビュー・感想・評価

哭声 コクソン(2016年製作の映画)
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ジャンルを超越した"斜め上展開"の連続で混沌と狂乱の異世界へと誘う圧倒的パワー!

『チェイサー』『哀しき獣』と、ナ・ホンジン作品のスクリーンから溢れ出すようなパワーには毎回驚かされてきましたが、今回の突き抜け具合はこれまでの比ではありません。

その過剰さは尋常じゃなく、さすがに要素を詰め過ぎているように感じる部分がなかったわけではないですが、"やり過ぎ"には常に喜びが満ちていることも確かです。祈祷シーンの狂いっぷりには、もう頭クラクラしました!

いろんな解釈ができそうな話ですが、僕は人間の"多面性"と、存在の"不確定性"についての映画だったのではないかと思います。

ほぼすべての登場人物が、最初の印象とはまったく違う姿を見せていく作りになっており、またどれがその人の"本当の姿"なのか分からなくなっていることも象徴的に感じられます。

他者のイメージする"私"は、それぞれ違っているはずで、それこそ悪にも善にもなりうるもの。監督は曖昧で虚ろな"人間"という存在について、この作品を通して迫ろうとしたのではないでしょうか。