九月

アリー/ スター誕生の九月のレビュー・感想・評価

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)
4.9
公開当時、その時は映画を全く観なかった私でもこの作品のことは知っていたし、「shallow」も聴いたことはあった。
でも、特に興味を引く題材ではなかったので、映画が好きになってからも観るつもりはなく…先日観た『リコリス・ピザ』のあのキャラクターに影響されて観てみることに。

分かりやすいシンデレラストーリー。かつ泣ける映画との評判を聞いていたので、もしかして誰か亡くなるのかな…と想像。そういったいかにも、なあらすじは聞いただけで斜めに構えてしまいがちなのだけれど、冒頭からかなり好きな雰囲気が漂っていた。
ジャクソンがアリーを初めて見た時のキラキラとした目。一方、アリーが一体ジャクソンのどこに惚れ込んだのか、分かりやすい描写はなかったけれど、ふたりが出会ったところで、肌に触れられたり素顔が見たいと言われたりして、ドキドキするような感覚が画面を通して伝わってきた。でも、お酒飲んでるし、有名人だし、と警戒して距離を置こうとしているところも良かった。

出会い、才能が見出され、お互いに高め合って、恋に落ちて…と、ふたりの熱気が伝わってくるような前半。ふたりで初めて一緒にステージで「shallow」を歌うシーンが大好き。(好きすぎて、ここで一時中断。また最初から見始めた。笑)
このふたりの関係と状態がずっと続いてほしい、と何度も思った。そんな思いには反して、アリーが成功すればするほど、ジャックは自分の繊細さや弱さを押し込めるように酒を飲んで、どんどん飲まれていく。

思えばアリーと出会った時からずっと飲んでいて、常に酔っている状態だったのかな。全ての行動が酔った勢いにも思えてきてしまうけど、そんな不安をおくびにも出さずに寄り添い続けてきたアリーのことを思うと、胸が痛んだ。
終盤になってようやくアリーは自分の本心を伝えるようになり、ジャックもアルコールを絶ち、ふたりがまたより幸せな方向へと進んでいくのかと思えば…
お酒の力を借りていないジャクソンは、今にもありとあらゆる不安に押しつぶされてしまいそうに見えた。
ジャックには酒やドラッグから手を引いてほしい、とアリーと同じように願ったのに、そのことが結果的には余計に彼を追い詰めることになるなんて皮肉すぎる。

アリーのマネージャーの言葉だけが決定打になったわけではないと思いたいけれど、彼の最後の決断がとても惜しくて悲しかった。

あまりにもアリーが可哀想、どうしてそこまで愛せるのか…なんて冷静になる余地もないくらいにブラッドリー・クーパーとレディー・ガガに惹きつけられた。
ふたりの世界や見つめ合う視線が、眩しくて愛おしくて儚くて、こんなにのめり込んでしまうとは正直思わなかった。
ふたりで歌う「shallow」はあのシーンだけだったのもまた良い。あのシーンが一番希望に満ち溢れていた。

最後に亡夫を追悼するためにアリーが披露した曲、歌っている最中にジャックとの日々が思い出されてたまらなく寂しくなった。でもあの曲、あの場面に繋がっていたなんて。
しんみり良い映画だった。

ブラッドリー・クーパー、ガーディアンズ〜のロケットの声が印象的で、俳優で声優もできるなんてすごいなぁ、と思っていたけれど、演技うまくて、さらには歌もうまくて、映画も作れるのかと度肝抜かれた。
レディー・ガガは、知った時から大スターすぎて特に好きでも嫌いでもなかったけれど、彼女の歌や演技に触れる度にいつも圧倒される。とってもかっこよくて、それでいて本作でナチュラルメイクやラフな格好をしているところを見ると、可愛すぎてどぎまぎしてしまった。
ふたりとも大好きになった。

『ナイトメア・アリー』→『アリー/スター誕生』を続けて観て、どんより、しんみりしてしまったので再び『リコリス・ピザ』を観て元気を出したいところ…。
九月

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