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アリー/ スター誕生のumisodachiのレビュー・感想・評価

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)
3.0
ブラッドリー・クーパー監督・主演。レディー・ガガ主演。『スタア誕生』の3回目のリメイク。

大物アーティストのジャックは、ライブで訪れた町のバーでアリーと出会う。歌の才能があるアリーは、容姿コンプレックスから日の目を見ずに地味な日々を過ごしていた。しかし、ジャックがステージにアリーを引っ張り上げたその日から、アリーの人生は激変する。ジャックと恋に落ち、ツアーに帯同する中でデビューが決まり、あれよあれよという間にスターダムをのし上がっていくアリー。一方で、アーティストとしての旬を過ぎたジャックはアルコールとドラッグに溺れていき……。

かなり思い切った分量を音楽に費やしている。フルコーラス歌う楽曲も多い。レディー・ガガのパフォーマンスを堪能できるという点では100点。ブラッドリー・クーパーの歌もなかなか良い。たっぷりと音楽の洪水を浴びることができる。

ストーリーの中心に据えられているのは、一気にスターダムをのし上がるアリーと、スターダムから転落していくジャックとの恋愛。キュートだけれど冴えない女の子からスターへと変身するレディ・ガガの芝居も良いのだが、より印象的なのはブラッドリー・クーパーの方だ。ブラッドリー・クーパーって、飲んだくれの役をやらせたら右に出る者はいないよね。才能も見る目もあり、愛に溢れた魅力的な男なのに、いい年してどうしようもなく幼稚なジャック。そもそも詳しい生い立ちが説明されるのもジャックだけだし、アリーよりもジャックに焦点が当たっている。アリーの放つ光によって、ジャックの陰はどんどん濃くなる。本作の中心にあるのは、光ではなくこの陰の方だ。

私としては、もっと陰に寄ってほしいくらいだった。ある決定的な事件の前後から、終盤までの流れをぐぐぐーっと引き延ばして、ジャックの絶望と愛に思いっきりズームインしてくれていれば、もっと入り込めた気がする。『ラヴィアンローズ』や初めてステージでデュエットしたシーンの高揚感、パイを顔に塗るシーンの緊張感など、グッとくるポイントはいくつもある。でも、全体的にちょっと雑なんだよな。「あれ、これ誰だっけ?」という人物が突然出てきたり、アリーがプロデュース方針をどう思っているのかが結局よくわからなかったり。

ジャックと兄との関係なんかは、かなり丁寧に描かれていて感動的なのだが、肝心のアリーとジャックの関係が少し散漫になってしまった印象。レディ・ガガのパフォーマンスを思いっきり入れ込もうとした故なのかもしれないが。才能と才能がぶつかり合った燃えるような愛なのだから、パイのシーンのようなキリキリした緊張感をもっと味わいたかった。私としては、『ピグマリオン』みたいな結末でもよかったくらいだ(それじゃ『スタア誕生』のリメイクにならないけど)。

あと、犬が可愛い。でも、ジャックが犬の容姿について「君にそっくり」とアリーに言ったときは、心の中で「あなたの方こそ、その犬に瓜二つですけど!?」と突っ込まざるをえなかった。ブラッドリー・クーパーほど大型犬顔の人もなかなかいないでしょ。
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