よーすけカサブランカス

フリー・ファイヤーのよーすけカサブランカスのレビュー・感想・評価

フリー・ファイヤー(2016年製作の映画)
3.5
十人そこらによる銃撃戦が一時間近く続くからには、それは単なる二つの陣営による殺し合いではなくなり、誰がどこにいるかもわからず、誰のかもわからない銃弾が飛び交う、混沌としか言いようのない場面となる。しかも数えきれないほど放たれる銃弾のうち命を仕留めることができるものはごく僅かで、体の色んなところにあたってはただ痛みに悶絶させるためだけにあるような気さえしてくる。
にしても冒頭の監督による注意書きは極めて奇妙である。あれがテーマだとすればこれは銃による「不殺」を描いた奇妙な作品である。
と同時に、銃撃戦が一時間近くも繰り広げられる、というある種の映画ファンにとっては垂涎ものであるかに思えるこの作品は、それほど長く続く銃撃戦が終始緊張感のある殺し合いではなく、もうそれはなんというか泥仕合というか徒労感のあるものであると描いたなかなか実験的作品なのではないか。
だからかなり面白い試みによって撮られてるとは思うのだが、映像としての面白みに関してはなんとも言い難い、というジレンマが感じられた。