TAK44マグナム

マインズ・アイのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

マインズ・アイ(2015年製作の映画)
3.6
超能力者の弱点、それは不意打ちだ!


宇宙人に改造された男が元婚約者のストーカーになって凶行を重ねるホラー映画「人間まがい」で一部の圧倒的な支持を得たとか得ないとか言われているジョー・ベゴス監督が、残念無念なハリポタルックの主演俳優グラハム・スキッパーと再度タッグを組んだサイキックSF!


どっかの寒そうな田舎を歩いている主人公のザック。
いかにも怪しげな髭面なので警官に呼び止められます。
そこでザックは念動力を発揮、パトカーの窓を割ったりしますが、いきなり彼ら超能力者の弱点が露呈しますよ!
超能力はすぐには発動できないので、不意打ち食らわされると何も出来ないのです!
そんなんではグラップラー達にはまるで歯が立ちませんよ!
超人ロックぐらいになれるよう頑張りましょうね。

そんなわけで簡単に捕まるザック。取り調べ中の彼は、何故かイスラム国に捕まったみたいに袋を被せられています。
どうも、超能力は目で見たものしか対象にできないらしいのです。
だったらその袋は見えるのでどうにかなりそうなものですが、誰もそのことに気が付かないのか、中盤にようやくザックが袋を裂くまで、「アホだなぁ、超能力者って」と思って観てましたよ。

ともかく、現れた超能力者研究者のスロヴァク博士に、恋人のレイチェルに会わすという条件で協力することになりますが、当然そんな約束は嘘っぱちでありまして、いつまでたっても恋人には会えず、クスリ漬けにされる日々。
しかも週一で髄液を抜かれます。
なんと、博士はその髄液をある事に利用しようとしていたのです。

ついに頭にきたザックは友人のアームストロングと共に脱走を試みます。アームストロングは捕まってしまいますが、ザックはレイチェルを救い出し、なんとか脱出に成功します。
ブチギレたスロヴァク博士は、眼帯の超能力者(なんと、あのノア・セガン様!)を招へいして、2人のあとを追わせるのでした。


ジョー・ベゴス監督は「人間まがい」も80年代の匂いがする作風でしたが、本作も更に香ばしく80年代臭をムンムンさせております。
全体を包むダウナー感が何だかデビット・クローネンバーグかジョン・カーペンターかっていう風味で、それっぽいタイトルインからして素敵。
本作の場合は、寒々としたロケーションと頭が爆発するサイキック描写から、クローネンバーグの影響が大きいのでしょう。
というか、まんま「スキャナーズ」なんですけどね。
超能力バトルなんてお互いがウンウン唸っているだけで、その血管が切れそうな顔芸が完全にスキャナーズのコピーであります!
(もっと派手にしたのが「ダークシティ」とも言える)

DVDのジャケだと車がクルクルと飛ばされたりしていますが、そういったお金かかりそうな場面は皆無。
いいところ、相手に銃を撃たせないようにするとか、机や椅子を動かす程度の能力なのです。
一番派手なのが頭を吹き飛ばしたり胴体を真っ二つ!ですけれど、そこまで強力な力を使うと本人が気絶したり、下手すれば死んでしまうという、超能力は諸刃の刃として描かれているんですね。
正直、手を使ったほうが手っ取り早いし、苦しまずにすみます(汗)
頭部粉砕なんて「ハチェット」の殺人鬼ヴィクターだったら朝飯前ですしね。
そんななので地味な映画ではあるのですが、力を込めた先はゴア描写にあるのです。
やたらと人体破壊の出来が良く、頭が裂けたりするのを執拗に描写してくれますので、グロリンチョを求めるなら満足できるでしょう。
出る映画みーんな、いつも安定の死にっぷりを披露してくれるノア・セガンも、やっぱり最高な死に様で笑かしてくれますよ!
(ノア・セガンの死に芸に関しては「アナーキー無法集団」のレビューを参照のこと)
眼帯のダークヒーローっぽい役だったのに、たんなるアホでしたが・・・(苦笑)

SFというより中盤以降は殆どスプラッターホラーなので、そういうのに目がないマグナム的にはキャッキャ言いながらバカ映画として楽しめましたが、いかんせん話が動き出すまでがスローでつまらないのが難点。
前半は超能力を抑えてしまっているので尚更つまらない。
「人間まがい」も話が動き出すまで退屈だったから監督の持ち味なのか・・・そんなところまで80年代ぽくしなくても良いのに。

まったく普通の家にしか見えない研究所や、プロの兵士とかには見えないチンピラみたいな警備の連中など、政府の援助をうけて危険な研究をしているとはとても思えないチープさもどうなのか。
あの研究所、超能力なくても簡単に脱走できそうなんですけどね。

銃弾の軌道を変えられるとか、せめてもうすこし超能力の凄さが感じられれば良かったのですが、なにしろ超能力者が無敵に見えないのでスロヴァク博士の目的もチープに感じてしまいました。
リアルって言ったらリアルなのかもしれませんが・・・
全員がサイコキネシス能力一辺倒ではなく、バリヤーはったり、透視ができたりなど、異なる能力をうまく使って危機を打開してゆくスタイルだったらもっと面白くなったんじゃないですかね。
ちょっとバリエーションに乏しかったなぁ。
まあ、やりたいのが「スキャナーズ」なら仕方ないんですけどね。
これ、勝手にリブートって事にすれば良かったのに(苦笑)

最終的には、ブライアン・デ・パルマの「フューリー」みたいにもなる本作、超能力でグロリンチョというのもオツであるからして、そういう部分で評価したい一作でした。


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