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ワンダー 君は太陽のsomaddesignのレビュー・感想・評価

ワンダー 君は太陽(2017年製作の映画)
5.0
まんまと泣かされた感


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ごく普通の10歳の少年オギーは、生まれつきの障がいにより、人とは違う顔をもっていた。幼い頃からずっと母イザベルと自宅学習をしてきた彼だが、小学5年生になって初めて学校へ通うことになる。同級生たちからじろじろ眺められたり、避けられたりするオギー。しかし困難に向き合う姿を経て同級生たちも少しづつ変わっていき……。


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「難病の子供の感動モノ」なんてベタすぎて、スルーする気満々だったけど序盤から涙腺決壊。
本人の苦悩以上に、親世代の葛藤の方に感情移入しちゃったからかも。
トリーチャーコリンズ症候群って初めて知った。
オギーの病気そのものやそこから生まれる不便には一切触れずに、一貫して普通の小学生として描いてるのが優しい。『顔の作りが他人と少し違うだけ』って前提を崩さず、その違いによって揺れ動く人々に焦点をあてているような。

原作はRJパラシオ。パラシオが幼い娘を連れて買い物に出たところ、たまたま同様の障害を持った女の子に出会った。パラシオの娘は驚いて泣き出してしまい、女の子を傷つけまいとパラシオは娘を遠ざけてしまった。すると女の子の母親は「そろそろ行かなくちゃね」と穏やかに声をかけて、何事もなかったように去ってしまった。

パラシオは、自分がどう振る舞うべきだったか考え、母親として子供たちにどう接するべきか教えるか思い悩んだ。「あの母親に一声かけるべきだった」「子供たちに怖がることじゃないって教えるべきだった」……。そういった経験を元に書かれたそう。


この話ちょこっとだけ映画本編でも触れられてたような。



ことほど左様に、障害を持った本人と家族の話だけじゃなくて、周辺部の人々の葛藤を多元焦点化して見せてくれる。(ミランダのとこは余談だと思ったけど)

オギーの顔の件以外はごく日常的な子供達の風景で、遊んだりケンカしたり仲直りしたり……。
劇中劇「わが町」の如くなにもない普通な日常を尊ぶ一方で、オギーの顔すら普通を過ごすのになんら障壁でない日常風景の一部にできるよってことかと思った。


久しぶりにスクリーンで見たジュリア・ロバーツ。相変わらず華があって、知性と母性を併せ持った複雑で慈愛満ちた母親っぷりが素晴らしかった!
家族の中でおどけ役を引き受けて、不在がちでも家族の柱として振る舞うオーウェン・ウィルソンの頼れる父っぷりも良かったし、イザベラ・ヴィドヴィッチのヴィアも良かった(「バトルフロント」のマディだったとは!)

まー、なんちゅーても「ルーム」で天才子役っぷりを見せつけたジェイコブ・トレンブレイ。
特殊メイクで顔の表情がほとんど出せないにも関わらず、喜怒哀楽、葛藤や決意etc 複雑な内面の変化を見事に演じ分けて見せた。

一方で「障害者の過酷な現実を無視した感動ポルノ」という批判も分からなくもなくて、オギーも家族も易々と困難を乗り越えすぎ、ハードルがそもそも低すぎな気もする。パパは何の仕事してたら多額の治療費用と立派な家を維持したり、娘を私学に通わせられるんだろう?とか考えてしまった。

51本目
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