キナ

RAW〜少女のめざめ〜のキナのネタバレレビュー・内容・結末

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

興奮と満足感が止まらない。
冒頭から引き込まれて、怒涛の展開に血肉が沸き立ち、抗えない本能的な狂気と極みの愛に圧倒される。

獣医学校のガラの悪さにびっくりしつつ、クラブの乱痴気騒ぎにドキドキしてたまらなくなる。
賢く控えめで地味だったジュスティーヌが、目付きも顔付きもどんどん変貌して一皮も二皮も剥けていく様が楽しい。
学んでいる分野が分野だけに、彼女の変化と共に動物を使った生っぽい映像表現が挟み込まれるのも好き。

切り落とされた姉の指に夢中でむしゃぶりついて、ふと目があったときの「ヤベェ!」って顔が可愛い。
動画に撮られていた、泥酔状態で白目剥いて男の死体に噛み付こうとする猛獣のような姿には戦慄。
常人離れしたはっちゃけを見せたあとの少女らしい表情や態度にギャップがあって良かった。

ジュスティーヌが自分の欲望に抵抗気味で上手く付き合えず不器用にもがくのに対して、姉のアレックスの受け入れ方と遣り手感が凄かった。
というか自覚して行動してる分、ぶっ飛び度数で言ったらむしろアレックスの方が高いんじゃないかな。
全く関係ないけどアレックスのビジュアルがとても好みだ…

最後、傷だらけの父親の身体が語る衝撃の人肉食欲の連鎖はいったいどこから続いていたのか、この後家族がどうなってしまうのか、ストーリー内に収まらないゾクゾクがまた好き。
欲を言うならジュスティーヌがもっと吹っ切れて大爆発するところを観たかったかな。
これからって所でシーンが変わってしまうことが何回かあり、もどかしく感じた。

姉妹の独特極まる強い愛が感じられた。
観ているだけで皮膚が痒くなったり鼻血が出そうになったり口の中に血の味が広がったりする凄い映画だった。
なんだか影響されて、来週馬刺しを食べに行く予定を立てた。

2018.3.7 二回目鑑賞 追記
昨日馬刺しを食べた

やっぱり姉妹の熱い愛を感じた。
アドリアンに向ける感情も特別なものだとは思うけど、たまたま近くにいた性の匂いを濃く纏った異性に興奮しているのが大きいと思う。
だからこそ衝動的に食欲と性欲を向けてしまうんじゃないかなと。

それに比べて姉妹の愛憎の情の溢れ具合といったら。
喧嘩の場面なんて本当に最高で殴り合い喰らい合いながら最後は「私達のことは私達しか理解できないんだからほっとけ」とばかりに肩組んでズンズン去って、本当、たまらなく大好きだよこのシーン。

母親の描写がかなり部分部分なのがこの作品のポイントだと思う。
冒頭のレストランやアレックスの病院での態度などで少々過保護の気がありそうな反面、車でだらしなく脚を投げ上げていたりと印象的な瞬間はありつつ。
顔はほとんどちゃんと映らないしまじで脇役なのに最後にドーンと示される彼女の本性の見せ方が非常に面白く感じた。

とにかく好きなところが多くて楽しかった。
劇中で流れていた、The DøのDespair,Hangover & Ecstasyと、ORTIESのPlus putes que toutes les putesを繰り返し聴いてしまう。
ただ、人の肉を喰らう作品においていつも疑問なのが、人の身体の肉ってそんな簡単に噛み千切れるのかなということ。
意外と唇の裏側みたいに頑張ればガリッといけるのかね。

2018.9.8 新文芸坐オールナイトにて三回目鑑賞 追記

抑圧されていたものが暴れ始める瞬間を、拘束されながらランニングマシンを走る馬で表現しているシーンがすごく好き。
「なぜ抵抗しなかったの」という台詞が全く違う人間から全く違う場面で発せられていた。確かに。
性的を含む様々な暴力の被害者に向けられる、他者の心無い言葉を感じた。
一方で加害者の悲壮を含むものも感じて複雑な気分になった。

この映画を観終わった後は必ず指を噛んでしまう。
キナ

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