Mikiyoshi1986

エタニティ 永遠の花たちへのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

4.2
在仏ベトナム人監督トラン・アン・ユンが初めて"フランス"を撮った意欲作。

かつてベトナム戦争により一家でフランスへ亡命移住した経歴の持ち主ですが、
常にベトナム人というアイデンティティーに誇りを持ち、異国の地から映画というツールで故国アジアの姿を作品に収めてきた彼。

本作では19世紀末から20世紀にかけてを生き抜くフランス上流階級の女性たちを至極耽美なタッチで綴ります。

全編が印象派のフランス絵画のように淡く清らか、優雅で華麗な趣に溢れており、
極上のクラシックの名曲がシーンを壮美に彩ります。

多種多様の木々草花が生い茂る庭園。
そこに吹き込む穏やかな風、柔らかい日射し、虫の音と鳥の囀り。

室内では豪華な調度品に囲まれ、ゆったりとした時間の流れに身を置く家族の風景。

オドレイ・トトゥ演じるヴァランティーヌの生涯を中心に、その子供たちや家族へと受け継がれる命の輝きはとても儚く尊い。

生の出会いから死の離別まで、愛や幸福や悲哀や歓喜の瞬間を切り取ったこの抒情詩は、
世代から世代へと紡がれる人生の営みを大いに讃歌してくれます。

エンドロールで子どものキャストの多さに驚き(しかも皆が天使のような美しさ)、あとイレーヌ・ジャコブが出ていたことに気づけなかったのは痛恨の極みです。

愛と命が繋ぐこの普遍的ドラマには、トラン・アン・ユン監督が今回初めて過去のフランスを捉えた理由と、「ETERNITE」というタイトルへの並々ならぬ思いが込められていました。
Mikiyoshi1986

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