ムビ太郎

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのムビ太郎のレビュー・感想・評価

4.2
"他人の死に責任を持てる人間はいない"
"他人の身近な死に対する理解は不可能である"

 この作品を観てリアリズムの極みを感じた。
あくまでも冒頭の文章は僕がこの映画から感じ取ったメッセージ性で主観に満ちたものだけれど、このメッセージを受けた僕はすごく空虚になった気分。逆に言えばそれだけ衝撃的な作品だったのかもしれない。
 父親は命の重さを軽んじていて、それは他人の命に対するものもそうだし、身近な命に対してもそう。形式にこだわって中身を見ない。結局大切なのは自分の名誉と命。母親は最後にボロが出る。結局同じ人間。本当に追い込まれた時に本性が出る。「命を与えた者にのみ、奪う権利がある」
この考えって元ネタがあるんでしょうか?娘のこのセリフって宗教的な教えなのかな。すごく儒教っぽさを感じたけど。
 何故死の責任が間接的に生じるのか?きっと関係ないんだよね。直接だろうと、間接的であろうと。その死に直面した人間に問いかける言葉ではない。結局「社会上理解できない、無関係な」物事に対して人間はカロリーを消費出来ないのだろう。この映画はもう一回腰を据えて観たい。
ムビ太郎

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