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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのncccoのレビュー・感想・評価

3.1
相変わらず人が見たくも無いものをわざわざほじくり返して見せつける、胸糞のひたすら悪くなるような映画を撮る監督。こんなのだってわかってたけどついつい怖いもの観たさで。

音楽も不協和音の連続で不気味さを煽るけど、何より怖くてしょうがないのがマーティン役のバリーコーガン。お父さん亡くしてお母さんの餌食になってから、彼はなぜだかどこぞの洗礼を受けて神になってしまったのだ。
人懐っこい冒頭から気味の悪さが止まらず、 スパゲティをかき回すシーンや監禁後の不穏さはまさに神がかっていて迫力に圧倒される。この子すごいよ、只者じゃない。

荒ぶる神をなだめようとする傍ら、父親への命乞いもうまくやってのける女たちの影でじわじわと犠牲になっていく息子が健気で不憫でしょうがない。
ラストシーンでニット帽被ってるお父さん、いや、まず誰か1人をその中から決める前にテメーが落とし前をつけるっていう頭は無いのか!と思わずにいられないが、そこはお決まりの不条理劇。

もはや笑わせにかかってくるコリンファレルの弱々しさに所々シュールなブラックユーモアを噛ませたサイコホラー。これで2時間は正直しんどいけど見終わったあとは意外とスッキリでメッセージ性はシンプル。モヤモヤを引きずる分ロブスターの方が完成度が高いのかな。

コリンファレルと対になるNキッドマンが絶妙に役柄にハマっていて、バリーコーガンに負けず劣らず円熟の演技、良かったです。ムーランルージュからもう何年?汚れ役も合う大人の女ですな。
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