いずみたつや

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのいずみたつやのレビュー・感想・評価

3.7
シュールな世界観が、過去作に比べてやや奇を衒っているようで鼻についた気もしました。

これまでの日本公開された作品では、隔離された空間=『籠の中の乙女』(傑作)、近未来=『ロブスター』といった具合に"一風変わった環境"が下敷きとなっており、それと監督自身の独特な世界観(作家性)が見事な化学反応を起こしていました。

一方、今作は舞台がより大きく、また"現実的"になったことで、過去作に比べて"奇を衒った"と感じやすい材料が揃ってしまったのかなと思います。

また、今までで1番笑える要素が少なかったようにも感じました。
これはこの監督においては重要なことだと思っていて、先に挙げた2作はどちらも思わず笑ってしまう場面がありましたが、今作は少し堅すぎて、「アート映画」らしさが強調されていたと思います。

確かに以前からずっとアート映画っぽい作風ではあるんですが、この監督の魅力は『籠の中の乙女』に『ロッキー』が使われていたり、『ロブスター』では一種のジャンル映画に挑戦しているあたりからもわかるように、決して「アート映画」的な部分ではないと思います。

ただ、クライマックスのヨルゴス・ランティモス流の"ぐるぐるバット"は狂いすぎていて、さすがに笑いました!あれは忘れ難いシーンでした。